同僚が去ることを期待する

 やっかいな同僚が自分より先に職場を去ることを当てにし、彼らが解雇されるか転職する日まで何とかやり過ごそうとする人も多い。だが、「相手がいずれいなくなる」というシナリオにすべての希望を託すことには注意が必要だ。

 同僚の不愉快な行動が組織文化として容認されている場合は特に「腐ったリンゴ」を取り除いても根本的な問題が変わらないケースもあると、サットンは警告する。無礼な言動を防ぐためには、多くの場合、他の要素、たとえば、インセンティブ制度のあり方、昇進や報酬の仕組み、会議の進め方、成果を出すために人々が受けるプレッシャーなども変える必要がある。

 数年前、ある医療保険会社のHR責任者から「言いにくいことを伝える対話」の研修を依頼されたことがある。ヒエラルキーを重視する企業文化のせいで、部下が声を上げにくく、特に現状に疑問を投げかけるようなアイデアが出てこないのだという。

 同社がその9年前に行った調査では、従業員が自社を「命令と統制」の極めて強い環境だと感じていることが示されていた。変革すると覚悟を決めた経営陣は、企業文化を変える取り組みを実施し、より協調的で非独裁的なスタイルで知られるリーダーを新たに採用した。そのようなリーダーが各チームの人員の入れ替えを進めた結果、9年間でリーダーを含む従業員の約80%が入れ替わった。

 ところが、企業文化に関する調査を改めて行ってみると、結果は9年前とほぼ同じ。HR部門の幹部は「もうお手上げだ」と憤慨していた。

 問題は、個別の人間ではなく、組織のシステムである場合も多い。これが同僚と協力することよりも敵対することを許容し、時にそれを助長することさえあるのだ。

 やっかいな同僚が辞めてくれるという夢がかなったとしても、企業文化が変わる保証も、後任者とうまくやっていける保証もない。結局のところ、同僚が去って状況が改善されることを願うよりも、同僚とうまくやれる状況を作り出すほうがましなのだ。

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 あなたは、ここに挙げたような欠陥のある対応を常に避けられるだろうか。それは無理だろう。完璧な人間は存在しないし、非生産的なアプローチは魅惑的でもあるからだ。

 だが、タイヤが一つパンクしたからといって、他の3つのタイヤに刃物で切り込みを入れても、何の解決にもならない。最初に選んだ方法(または複数の方法)がうまくいかなかったら、別の方法を試すか、周囲に助けを求めよう。上司や友人、共通の同僚が斬新な解決策を提示してくれるかもしれない。

 大切なのは続けることだ。小さな改善が、大きな違いを生み出せることを心に留めておこう。

本稿は、エイミー・ギャロの著書Getting Along: How to Work with Anyone (Even Difficult PeopleHarvard Business Review Press, 2022. からの抜粋


"4 Tactics that Backfire When Dealing With a Difficult Colleague," HBR.org, September 21, 2022.