●仕事の負担が増すことで、期待された効果は相殺されてしまう
このような現象が起きるのは、雇用不安を感じた従業員は、高いパフォーマンスを発揮しようというモチベーションを抱くようになる半面、その不安の感情、そして仕事の負担が増えたり、別の仕事を探したりすることに伴うストレス、いら立ち、怒り、疲労によって、実際に高いパフォーマンスを発揮することが難しくなるからだ。その結果、従業員に失職の不安を与えるという手法によって期待される効果は、相殺されてしまう。
ある調査対象者は、次のように語っている。「自分の仕事のことを心配すると、成果を上げるどころか、むしろ力を発揮できないことに気づきました。不安にさいなまれて、気が散りやすくなっているように思うのです」
別の調査参加者は、レイオフの影に脅えるあまり、「頭の中が不安でいっぱい」になり、上司に好ましい印象を与えることがかえって難しくなったと述べている。それまでより一生懸命に努力し、自分を売り込もうとしたにもかかわらず、そのような結果になったという。
職を失うのではないかというストレスを抱えている状況では、ストレスのない時と同等のパフォーマンスを発揮するために必要とされる労力が大きくなる。それゆえ、パフォーマンスを向上させたいという意欲を強めたとしても、その努力は結実しない可能性が高いのだ。