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サステナビリティは、多くの経営者にとって優先課題であり、取り組む企業も増加している。しかし、サステナビリティ目標の達成がいかに難しいか、どれほど多くのリソースを投下しなければならないかについて、正しく理解している経営者はほとんどいない。そこで必要なのが、経営者に代わり、サステナビリティ推進に専任で取り組むプロジェクトマネジャーの存在である。本稿では、サステナビリティ担当のプロジェクトマネジャーを置く重要性を解説するとともに、サステナビリティ推進に関連したプロジェクトを成功に導くための3つのステップを紹介する。

サステナビリティに対する
CEOの危機意識の薄さ

 先日、世界最大の消費財メーカーであるプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)のトップマーケターであるマーク・プリチャードは、P&Gがさまざまな方法によってサステナビリティに取り組み、ブランド変革を行ってきたと語った。

 P&Gは長期ビジョン「Ambition 2030」の中で、2030年までにすべてのパッケージを100%リサイクル可能にし、再生可能エネルギーを100%使用し、廃棄物をネットゼロにするという目標を掲げている。さらに、企業のサステナビリティプロジェクトのプラットフォームであるブランズ・フォー・グッドと協力して、年間70億ドルの広告宣伝費を投じ、「持続可能なライフスタイルを望ましい」と考える消費者を増やすための啓蒙活動を行おうとしている。

 P&Gの目標は野心的で刺激的だが、最近ではよく耳にするような取り組みともいえる。おそらくサステナビリティは、現代で最も重要な変革プログラムであり、すべてのCEOにとって優先課題なのだろう。顧客も株主も金融アナリストも、企業が計画を実行し、掲げた目標を達成できるかどうか、これまでに以上に注意深く見守っている。

 多くの企業が気候変動に関する目標を大々的に発表している一方で、その実現方法を耳にすることはあまりない。たとえば、P&Gが現在使用している材料をリサイクル可能な材料に100%切り替えるためには、数千の代替部品を見つけて、プラスチックから紙、接着剤、金属部品まで再設計する必要がある。

 このように極めて複雑なプロセスを伴うために、多くの企業がこの大掛かりな改革の実現に苦労している。2030年に目標を達成するには、向こう2~3年の間に大きな変革を行う必要がある。

 しかし、短期間で、極めて幅広い分野に取り組まなければならないにもかかわらず、CEOには危機意識が感じられない。コロナ禍の初期には、危機意識が素晴らしい集中力を発揮し、優先順位の決定、そして適切な資源配分をもたらした。

 それに対し、サステナビリティ目標については、その達成がいかに困難で、いかに多くのリソースを集中投下する必要があるか、深く理解しようとするCEOや経営幹部がほとんどいない。また、トップダウンで目標が定められると、中間管理職や組織の末端から賛同を得るのに必要なボトムアップの分析が行われなくなる。

 持続可能な未来を実現するためには、念入りに計画された大量のプロジェクトを成功させなければならない。しかし、コロナ禍のように、CEOが事実上のプロジェクトマネジャーの役割を果たすことは望ましくない。CEOは、サステナビリティ推進に取り組む、担当のプロジェクトマネジャーを任命し、組織改革の指揮を執らせる必要がある。