●土台
・目的:プロジェクトの「なぜ」を定義する時は、それが一つ以上の持続可能な開発目標に関連づけられるかどうか検討する。持続可能な目的は、ステークホルダーと従業員のエンゲージメントを著しく高める。
・投資:サステナビリティは、短期的には大きな代償を伴うことが多いため、複数の尺度が必要だ。事業計画を書く時は、カーボンフットプリントを含めるとともに、持続可能な要素(リサイクル品、サステナブルなベンダー、廃棄費用など)を検討しよう。それほど環境フレンドリーではない方法より高コストになる場合でも、このような要素を取り入れよう。
・便益:ポジティブなインパクトをトリプルボトムラインの目標と結び付けよう。カーボンフットプリントの増加は、プロジェクトによる成果によって相殺できるかもしれない。
●人材
・後援者: プロジェクトの後援者はサステナビリティを強く支持し、必須事項を理解しなければならない。そして、必要であれば伝統的な組織の考え方を改めて、利益よりもサステナビリティを優先する覚悟が必要だ。
・利害関係者:利害関係者のニーズや期待に応える時は、常にサステナビリティについて協議すべきだ。サステナビリティの強力な支援者を見つけて、あなたのプロジェクトの運営委員会か中核チームに加えよう。あまり目立たない利害関係者がいないか、考えてみてほしい。たとえば、公共入札担当者が入札条件でサステナビリティ要件に重点を置けば、改革の大きな助けになりうる。
・リソース:プロジェクトマネジャーは、サステナビリティの必須要件を理解し、専門家を巻き込み、プロジェクトを定義したり実行したりする時、その影響を考慮に入れるべきだ。また、サステナビリティの社会的側面(ワークライフバランスや機会の均等、人材開発など)をプロジェクトチーム内で実践すべきである。
●創造物
・成果物:プロジェクトの範囲を決める時は、エコなデザインを原則として適用しよう。すなわち、そのソリューションは、環境に大きな脅威を与えない方法で構築され、利用され、処分される。成果物をデザインする時は、持続可能な材料とサプライヤーを使う。
・計画:できるだけ効率的にスケジュールと段取りを組み、廃棄物や環境インパクトは最小限に抑え、輸送コストを抑え、資源を有効活用し、労働者のスキルを高める機会を見つけ、貧困地域では雇用を創出し、大量生産の経済性を検討する。サステナブルな材料は、従来よりも調達に長い時間がかかるかもしれないことを受け入れる。プロジェクトの成果物が廃棄や耐用年数に達した際には、すべての部品の耐久性、再利用可能性、リサイクル可能性を調べる。
・変化:持続可能なプロジェクトでは、モチベーションを上げる要素を活用することも重要になる。たとえば、外発的報酬(給料や福利厚生)、内発的報酬(仕事そのものから得られる満足感やパーパス意識)、そして社会的報酬(他者と協働する恩恵、帰属意識の恩恵)などだ。サステナビリティの実現は、心理的に安全な環境も必要とする。それは古い考え方に疑問を投げかけ、別の方法を提案する状況を促すだろう。サステナビリティ・プロジェクトのリーダーは、透明性と説明責任の原則に従い、プロジェクトとその社会的・環境的インパクトについて、積極的かつオープンにコミュニケーションを図らなければならない。
デジタル化による混乱が広範囲に及んでいると思われる場合は、企業が真に持続可能なビジネスへ転換するためにどれほど苦労するか、少し様子を見るといいだろう。しかし、経営陣のサポートがあれば、サステナビリティを専任で担当するプロジェクトリーダーやプロジェクトマネジャーがこの大きな改革を推進する好機になる。
今後数年は、トリプルボトムラインの目標が引き続き最重視されると考えられるが、前述したような能力をいまのうちに獲得した組織は、有利な立場で、自社のビジネスを再考し、再構築できるだろう。
"Project Leaders Will Make or Break Your Sustainability Goals," HBR.org, October 10, 2022.