(2)サステナビリティプロジェクトの恩恵を加速する
プロジェクトリーダーは、改革のスピードをコントロールし、加速できるならすべきだ。また、サステナビリティを優先し、加速するために必要なトレードオフを見極めて、シニアリーダーに提案する権限を与えるべきだ。
こうしたトレードオフの一部は痛みを伴うかもしれないし、最大のカーボンフットプリントを生み出すイニシアティブやプロダクトとの取引停止につながる可能性もある。しかし、これが環境や社会にポジティブなインパクトを与えるための代償となるだろう。
(3)パートナーシップを組む
プロジェクトリーダーは、同じ志を持つ組織を見つけて、サステナビリティ・パートナーシップを確立すべきだ。外部の組織と協力すれば、インフラやイノベーションを共有することができ、すべての当事者に恩恵をもたらすだろう。
食品・日用品大手のユニリーバは、少なくとも240工場と400事業所で非有害廃棄物をゼロにして以来、1億7400万ポンドのコスト削減に成功した。さらに同社は通信事業者のトゥーデグリーズ(2degrees)と組んで、ゼロ廃棄物モデルを外部組織と共有している。
(4)組織内外で信頼を構築する
サステナビリティパフォーマンスと、それをきちんと測定する方法が判然としないため、経営者が掲げるサステナビリティ目標を全面的に信頼するステークホルダーは減少している。それは「グリーンウォッシングだ」という非難や、信頼の低下につながる可能性がある。
プロジェクトマネジャーとPMOは組織の先頭に立って、すでに実現した成果や、目標に向けた進捗状況、そして全体的なパフォーマンスを中心に、自社のサステナビリティに関する情報を拡散させる必要がある。
近い将来、規制当局や投資家が商品の成分表示と同じ要領で、企業に商品のカーボンフットプリント表示を義務づける可能性は高い。CEOは、いまからこれらのデータを集め、全社的なデータインテリジェンスシステムを構築する権限をプロジェクトマネジャーに与え、支援することができる。プロジェクトマネジャーがこのような措置を行って信頼を獲得すれば、CEOがサステナビリティアジェンダを達成する大きな助けになるだろう。
3. 「プロジェクトキャンバス」で
サステナビリティ改革を設計する
サステナビリティ・プロジェクトは、技術的に高度であり、ステークホルダーにとっても極めて複雑だ。そこで筆者は、プロジェクトキャンバスを使うことを推奨している(邦訳「プロジェクトエコノミーの到来」DHBR2022年2月号を参照)。これはプロセスや管理ではなく、バリューや便益に重点を置いた、1ページの戦略的テンプレートである(詳細は筆者の著書HBR Project Management Handbookを参照)。
以下では、キャンバスを構成する9個の各ブロックに、サステナビリティを組み込む方法を示した。このキャンバスを用いることで、サステナブルな取り組みがあらゆるプロジェクトの最初から最後まで組み込まれるようになり、プロジェクトリーダーをサポートしてくれるだろう。

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