組織の課題
マネジャーが注目すべき知見が2つある。第1に、イノベーションスタイルは一般に、均等に分布はしていない。筆者らの調査では、回答者の中でジェネレーターが占める割合はわずか17%であるのに対し、インプリメンターが41%となっている。これは注目に値する。
第2に、人々はイノベーションスタイルによって、異なる職務やマネジメントレベルに分類される傾向がある。たとえば、ジェネレーターは圧倒的に非工業系の職種に多く、コンセプチュアライザーは戦略立案や組織開発の職種に多い。
この2つの知見は、同じ問題に通じる。つまり、あなたの組織やチームでは、イノベーションスタイルの適切なバランスが欠けていて、認知的多様性が十分ではない可能性が高い、という点だ。
認知的差異が均等に分布せず(たとえば、インプリメンターが多く、ジェネレーターが少ない)、人々がイノベーションスタイルの好みに基づいて、自分の仕事や組織を選ぶとすれば(たとえば、ジェネレーターは経営者やエンジニアではなく、アーティストや教師になる傾向が高い)、ほとんどの組織やチームに、イノベーションに理想的な認知的多様性が欠けていることが考えられる。
イノベーションフレームワーク「SMRT」
組織が、より効果的にイノベーションを起こすには、次の2つのことを行う必要がある。特に、問題を発見できるジェネレーターをより多く育成すること。そして、より一般的には、4つのイノベーションスタイルを巧みに配置することだ。
この2つを実現するために筆者らが提案するのが、4つのステップからなるイノベーションフレームワーク「SMRT」である。
1. 体系化する(Structure):イノベーションスタイルの適切な比率を実現する。
2. モデル化する(Model):トップダウンでイノベーションスタイルの重要性を示す。
3. 報酬を与える(Reward):問題発見のインセンティブをつくる。
4. 訓練する(Train):すべてのスタイルについて学習する機会を設ける。
筆者らが特定した最高クラスの組織は、これらの戦術を実践している典型例だ。今回の調査では、1社で4つの戦術のうち2つ以上を展開しているケースは稀だったが、これらの戦術は補完的なものであり、4つすべてを実行することが自社のイノベーションを加速させる。