あなたはなぜ、キャリアの「リ・インベンション」に踏み切れないのか
Lauren Nicole/Getty Images
サマリー:コロナ禍を経て、プロフェッショナルの多くが自身のキャリアを再考している。まったく新しい領域に大きく方向転換するような「リ・インベンション」(再創造)の領域にまで踏み込もうとするケースも少なくない。だが... もっと見る、実際にそれを成し遂げられているかといえば、現状維持をやめて、スタートを切るところから、すでに頓挫しがちである。本稿では「自己完結」「考えすぎ」「正解探し」「先延ばし」という4つの習慣が、その妨げになっている理由を説明し、未来に向けて自分自身の新たな可能性を探求するための方法を紹介する。 閉じる

現状維持をやめて、最初の一歩を踏み出す方法

 マイクロソフトが、従業員3万人を対象に行った最近の調査によると、新型コロナウイルス感染症によるパンデミック以降、ビジネスパーソンの46%がキャリアの大きな方向転換か転職を考えていることが明らかになった。しかも、多くは単なる職務の変更に留まらず、個人としてのキャリアの刷新や「リ・インベンション」(再創造)の領域にまで踏み込んでいるという。

 だが、筆者らの経験からいえば、リ・インベンションに関心を示したプロフェッショナルの多くは、最終的にそれを成し遂げられずにいる。

 多くのプロフェッショナルがつまずく、最も難しいポイントは、現状維持をやめて、スタートを切るところだ。これは、特にシニアエグゼクティブに当てはまる。個人のリ・インベンションには、人生の選択を再評価し、別の道を想像することが欠かせない。ところが、いま歩んでいる道が、少なくとも外からは成功しているように見えるリーダーの場合、それは容易なことではない。

 また、アイデンティティがリーダーとしての仕事に大きく依拠していることも、別の可能性を考えることを難しくしている。リーダーは、組織レベルの戦略プランニングや変革についての教育は受けてきたが、個人レベルのリ・インベンションについては大半のビジネススクールでカリキュラムに含まれてない。

 さらに皮肉なことに、エグゼクティブとしての成功に不可欠な習慣が、個人のリ・インベンションと真っ向から対立することもある。筆者らは何千人ものマネジャーにティーチングやコーチングをする中で、4つの落とし穴を特定した。すなわち「自己完結」「考えすぎ」「正解探し」「先延ばし」という4つの習慣が、未来の新たな自分の可能性を検討し、探求するための第一歩を踏み出すことを妨げているのだ。

 筆者らの研究では、リーダーがみずから、どの落とし穴にはまっているかに気づき、出口を想像できるようになるための方法を見出した。ラピットプロトタイピング(迅速な試作モデルの作成)、アイデアの視覚化、迅速なフィードバックなど、主にデザイン思考の原則にヒントを得たものである。落とし穴がどのようなものかを理解すれば、最初のステップを踏み出し、やがてリ・インベンションの探求を成功させることができるだろう。