自己完結
リーダーはしばしば、いかに自己完結しているかを誇らしげに語る。周囲に依存することなく、自力で優れた仕事を成し遂げ、誰かからモチベーションを与えられたり管理されたりすることをほとんど必要としない。そのように行動してきたからこそ、シニアポジションを得られたのだろう。
とはいえ、自己完結には裏の面がある。他者とのつながりが希薄になり、新しいアイデアやフィードバック、励ましに触れる機会が制限される。また、疑問や不安が生じても、それを他人には見られないように隠してしまうのだ。
自己完結度が高い場合、その落とし穴から抜け出す手助けをしてくれる相手が必要だ。人に助けを求めるという行為は、わかってはいても勇気がないとできないものである。特にキャリアにおける弱点を認めるとなるとなお難しい。
製薬会社の財務担当エグゼクティブで、筆者らのワークショップに参加したフリッツは、自己完結の落とし穴にはまった典型例だ。自立していて、プロジェクトやプレゼンではたいてい主導権を握り、自分一人でできることを誰かと協力したり、相手に任せたりすると、仕事のペースが落ちると思っていた。この独立独歩の姿勢ゆえに、これまで実績を上げ、周囲から「頼れる人」という評判を築いてきたのである。
ところが、会社でリストラが始まると、この習慣はまるで役に立たなくなった。フリッツは社内で起きている変化を把握できず、途方に暮れた。自分も追い出されるのではないかと感じていたが、状況を話し合える相手がいなかったのだ。ある日、同僚が一緒に昼食を取りながら話さないかと誘ってきた時も、あやうく独立独歩の精神が邪魔するところだった。
いつものように「いや、大丈夫ですから」と返事をしかけた時、自分は大丈夫ではないし、自分以外が社内の状況をどう見ているのか、相手の話を聞くことは役に立つかもしれないと気づいた。ここでイエスと答えたことをきっかけに、彼は自分のやり方から脱却し、リ・インベンションの長期的な探求を始めることができたのである。
あなたにも、相手に助けを求めることや誰かの助けを受け入れることに抵抗を感じる傾向があるならば、それは自己完結の落とし穴にはまっている兆候かもしれない。その場合は、信頼できる相手を見つけ、じっくり相談したいことがあると伝えよう。
ジャック・ウェルチはゼネラル・エレクトリック(GE)のCEOを務めていた当時、シニアエグゼクティブが若いデジタルネイティブ世代からデジタルコンバージェンスを学ぶという「リバースメンタリング」を実施した。