企業リーダーほど民主主義の再建に貢献できる存在はいない
Kevin Van Aelst
サマリー:企業による献金は、政治的な腐敗につながるものとして描かれ、企業と政治は分離されるべきと考えられる傾向がある。しかし、企業が繁栄するためには、政治的な安定が欠かせない。そのため、民主主義の行き詰まりは企... もっと見る業にとって脅威でもある。そこで本稿では、企業が民主主義を再建する4つの方法を紹介する。 閉じる

企業は民主主義を強化できる

 選挙は、民主主義国家にとって重要な分岐点だ。原則として、選挙運動は市民がその時の最も差し迫った問題について議論できるよう促すとともに、納得のいく改善策を示し、それを行う能力がある候補者を選べるようにすべきだ。しかし実のところ、民主主義のプロセスは機能不全に陥りつつある。最近の選挙運動は、陣営の二極化と敵意を煽り、選挙の公正さに対する不信感を植え付けるばかりで、建設的な討論にはほど遠い。

 企業リーダーたちもこのような状況に気がつき、しばしば懸念を示してきた。民主主義が混乱すると、企業の繁栄に不可欠な政治の安定が脅かされる。それにもかかわらず、企業を解決策の一つと見なす人はほとんどいない。それどころか、企業と政治は異なる領域に存在するものであり、分けておくべきだと考えている。

 選挙運動における企業献金は、政治的な腐敗につながるものとして描かれることが多い。特定の政治家や政治活動委員会(PAC)に対する企業献金は、その企業が好む政策を唱える候補者に有利になるよう選挙を操作する、あるいは見返りに便宜を図ってもらうための企てと受け止められがちだ。

 しかし、企業は米国の民主主義システムや文化を活性化し、強化することもできる。企業献金に比べて目立たないが、それよりも重要な方法で民主主義システムを再起動させ、改善できる。以下では、その重要な方法の例を紹介しよう。

有権者に政治参加を促す

 どのような企業でも、有権者に政治への参加を促すことができる。中間選挙はそれにうってつけの機会だ。

 中間選挙は、投票率が50%を大きく割り込むことが多い。2018年は49%、2014年はわずか36%だった。投票率の低さは、無関心や不満の表れとしてよく嘆かれているが、真の原因はもっとありふれたものだ。極めて重要な事案に投票できる可能性は限りなくゼロに近く、投票のメリットはわずかであり、ちょっとしたハードルがあるだけで投票に行かない理由になってしまう。企業は、有権者が直面する明らかなハードルを取り除くことによって、この状況をよい方向に変えるふさわしい存在である。

 まず、米国の選挙が火曜日に行われるという現実を考えてみよう。これは、投票時間中に仕事をしている人たちにとってハードルになる。投票に行きたい人は仕事を休んでペナルティーを受けたり、減給処分になったりするおそれがあるのだ。

 そこで、企業が投票日に数時間の休暇を与えれば、このハードルを下げられる。実際に、多くの企業がすでにそのような取り組みを行っている。ウォルマート、コカ・コーラ、ギャップ、ボストン コンサルティング グループなどの2000社以上が企業主導の連合「タイム・トゥ・ボート」に参加し、投票日は従業員に有給休暇を与えることを約束している。

 投票率を上げるために、企業にできることは、従業員を対象にした取り組みだけではない。最近は、さらに踏み込んで、顧客やユーザーの投票をサポートする企業もある。フェイスブックは、2010年の中間選挙において数千万人のユーザーに投票を呼びかけるメッセージを送った。また、ユーザーが「I Voted」(私は投票した)というボタンをクリックすると、すでにそのボタンをクリックした友だちのプロフィール写真が表示されるようにした。これはターゲットユーザーとその友だちの投票率を高めることにつながった。

 フェイスブックによると、2022年の中間選挙では、中間選挙に関連する用語を検索したユーザーに対して、有権者登録や投票の方法、時期、場所についての情報を8000万以上も発信したという。筆者らがフランスで行った実験において、この種の情報を有権者に届けると、投票率を押し上げることがわかった。

 同じ研究では、有権者登録や投票に必要な時間が短縮されると、単なる情報提供より大きな効果があることも明らかになった。企業が投票を容易にするストレートな方法は、投票所まで歩いたり交通機関を利用したりする有権者を車で送迎することだ。2022年11月8日に行われた中間選挙の投票日を前に、配車サービス大手のリフトは、投票所までのライドシェア、自転車シェア、スクーターの利用料金を半額に割り引くと発表した。こうした取り組みは、ユーザーを直接的に助けるだけでなく、競合企業にも行動を促すことにつながる。