1. CEO、CFOと緊密な関係を構築する
経済的不確実性というストレスがある状況では、オープンな対話を続けることが、これまで以上に重要となる。適切な数字と言葉を用意して、直接的および間接的なマーケティング費用が生み出す成果を説明することが欠かせない。
経済面のプレッシャーにさらされているリーダーは、短期的な成長指標を優先する可能性が高い。そのため、検索やソーシャル、eコマースなど投資対効果が明確なマーケティング戦術を好むというバイアスが生じる。一方、ブランドエクイティを高め、ブランドストーリーを伝えるうえで決定的に重要な役割を担うのが、購買過程の初期、すなわちトップオブファネル(ToFu)の戦略である。これはマーケターにとっては常に大きな課題となってきた。
たとえば、極めてクリエイティブなテレビコマーシャルを見た視聴者が、商品に好感を抱き、それをオンラインで購入しても、売上げにつながったと評価されるのは「ラストクリック」である可能性が高い。トップオブファネルでの取り組みが寄与していたとしても、投資対効果が明確な「ラストクリック」の部分が評価されてしまう。
CMOは、他の最高経営幹部がマーケティング活動に関する数字を総合的に理解できるように、そして成果をファネル全体の中で理解できるように、できる限りの努力をしなくてはならない。
とりわけ重要なのは、マーケティング部門がいかにして、経営陣の望む財務面で幅広い成果を生み出すかを明確に伝えることだ。可能であれば、それを経営陣が用いている言葉で語る。CEOやCFO、さらには取締役会とのパートナーシップと透明性とコミュニケーションが、この困難な時期に重要な支出の削減に対抗する手段となりうる。
2. 非効率な支出や働き方を完全にやめる
惰性とは強固なものだ。どの組織にも効果的、効率的でない時代遅れの支出パターンやプロセスが存在している。そのため、景気後退は、基本原則を変える機会となる。ただし、これは必ずしも投資全体を削減するという意味ではない。リソースを最大かつ最善の方法で再配分することも含まれる。
おそらくは社内政治や好みの問題で、もはや成果につながらないが、その存在が許されているプロジェクトがあるだろう。いまこそ、目標に結びつかないプロジェクトをいったん停止し、ばらばらに進められていた取り組みを統合すべき時だ。
この問題は往々にして、説明責任とサイロ化に帰結する。
たとえば、異なる事業ユニットが同じチャネルを介して同じ顧客をターゲットにし、さらには互いのコストを競り上げたり、顧客全体の購買力を十分に活用できなかったりしていないだろうか。ブランドや製品が異なれば、それぞれが状況をコントロールしたいと考えるのは自然なことだが、そのやり方では最善の結果に結びつくことはあまりない。
先進的な企業は、マーケティング、卸売り、小売りといった投資分野やメディアチャネルごとにサイロ化していた予算を迅速に最適化し、組織の断絶により支障が出ないよう対策を取っている。