ステークホルダー価値のパワーは失われている
民間セクターは富の創出とイノベーションの中核と見なされることが多い。1990年代後半から2000年代初めのシリコンバレーのサクセスストーリーは、その代表的な例である。このモデルでは株主価値を、企業の成功を測る究極の尺度と見なす。実際、企業は経済の最も生産的な主体であるという考え方は、高所得と莫大な富を都合よく正当化する根拠となってきた。
しかし今日では、多くの企業がパーパス志向を掲げ、株主価値だけでなくステークホルダー価値の創出に力を入れている。
ステークホルダー価値とは、公共セクター、地域コミュニティ、慈善団体、労働者、その他すべてが企業の意思決定に参加して、そこから利益を得るべきだと主張する概念であり、数十年前からビジネススクールや企業の役員たちの間で取り上げられてきた。これにより、投資家や企業リーダー以外の利益を考慮することは適切であり、しかも必須であると考える世界への扉が開かれた。