仕事は労苦か、意味あるものか

 見るからに強面の起業家が、シャンデリアのガラス細工の形状について、しわがれ声で熱弁を振るうのを聞いたことがあるだろうか。私は「愛着と労働の研究ロードトリップ」とみずから名付けたものの一環として、このような場面に出くわしたことがある。ヨガをしている時でも、外食に出かけた時でも、用事を済ませている時でも、活きいきと夢中になって働いている人やその痕跡を周囲に見かけると、大いに好奇心をくすぐられる性分なのである。これは誰がやったのだろう。どうやってこの仕事や業種を選んだのだろう。私がサービスの受け手として感じる魔法のような魅力を、彼らも同様に感じているのだろうか。

 ある時、私の研究ロードトリップを熟知している同僚の一人が、サンディエゴの中心街にあるレストラン、「ハーブ・アンド・ウッド」に一緒に行ってみないかと誘ってくれた。重厚な大理石のカウンター、木の梁をめぐらせた倉庫のような高い天井、巨大なヤシの葉が取り囲む大きなレンガ造りの暖炉を眺めた後、私はオーナーのクリス・パファー氏を探して、シャンデリアやその他の話を聞いた。

 ミュージシャン、大学中退、皿洗い、キッチンマネジャー、起業家、顧客体験の提供者……。クリスは実に多様な経歴を持つ人物だが、いったん話し出すと止まらなくなっていた。壁の絵の青はソファーの青いレザーの色と似ているが、完全に同じではないこと、カウンターの大理石はこれほど厚いものはめったにないこと、どっしりした石のテーブルに座れば、お客様はいっそう安心感を覚えて幸せな気分になると考えたことなどを話してくれた。彼は大理石の厚みに関する自説を展開し終えると、エントランスのデザインに関する心理学的考察や、受付台のこの絶妙な位置がなぜお客様に洗練された雰囲気を感じさせるのかについての論考に入った。