1922年10月、『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)の記念すべき第1号の巻頭論文において、誕生したばかりのHBRの目的が示された。「ビジネスマンの代表的手法(原文ママ)はいかに形成されるか(中略)、適切なビジネス理論をいかに導き出すべきかを探ることには意味がある」。ハーバード・ビジネス・スクール学長のウォレス B. ドナムはそのように記した。さらに、そうした理論が不在では、「ビジネスは非体系的で場当たり的なままであり、多くの人にとって、下手なギャンブルを打つようなものであり続ける」。そのような状況を是正すべく、HBRは「経営者の行動を支える、よりよい理論的基盤」を提示していきたい──と。

 当時、ビジネス界には楽観論が広がっていた。それも無理はない。数年前に第1次世界大戦が終わり、スペイン風邪の世界的な大流行も収束、景気は一時的な落ち込みを脱し、先行きは明らかに改善に向かっていた。会計士のジョージ O. メイは創刊号でキャピタルゲイン課税について論じた中で、いみじくも次のように指摘した。少なくとも米国では、景気は「通常の状態に戻りつつある」。