長期的に整合性を取る戦略
有効性のある戦略とは基本的に、企業の長期ビジョンに合致した、互いに整合性のある一連の決定を行うことである。ここでいう整合性とは、いくつかの重要な決定に一貫性があり、それらが全体の目標達成に向けて調和している状態を指す。
戦略に整合性があれば、すべての人が自身の事業部門に有利な提案だけではなく、会社全体として考えた時にプラスとなる提案を採用するようになり、マイナスに働く提案は拒否するようになる。また、戦略は最高経営幹部から始まることが多いが、中核的な一連の決定を通じて組織全体に戦略を浸透させ、人々の優先順位や働き方、意思決定の行われ方を形づくるのは、整合性の力である。
マスクに買収される以前のツイッターには、人と時間を超えて、はっきりとした整合性のある明確な戦略があった。同社は創業以来ずっと、何よりもシンプルさを重視しており、同社の選択はその戦略と見事に合致していた。サービスの中核は常にツイートであり、それは2006年のサービス開始以来、ほとんど変わっていない。
この姿勢は、ツイッターの組織文化にも反映されている。同社には3人の共同創業者がいるが、そのうちの一人であるエヴァン・ウィリアムズは、「最初の1〜2年は、追加した機能とほぼ同じ数の機能を削除していた」と振り返る。そのアプローチが消え去ることはなかった。
しかしながら、この戦略には明白な弱点があった。
ツイッターはスクワッド(画面共有グループチャットアプリ)、ブレーカー(ポッドキャスティングアプリ)、レビュー(ニュースレターアプリ)など60社以上を買収したが、現在の同社の姿からは、その事実は見えてこない。シンプルさを重視した結果、ツイッターは停滞した空間に閉じ込められてしまったのだ。マスクに言わせれば、そして大口株主から見ても、この戦略によってツイッターは緩慢な死に向かっていた。
現在、同社で新たな戦略を実行するのが難しいのは、旧来の戦略においてこの整合性が有効だったからにほかならない。