プロダクトロードマップ
新たな戦略を実行するには、既存のプロダクトを未来の価値提案に合わせて変化させる必要がある。しかし、その際に、旧来の価値提案と新たな価値提案の間で衝突が起きることは避けられない。
ツイッターの青いチェックマーク(認証バッジ)を例に取ろう。当初、このマークはフォロワーが本物のアカウントとなりすましアカウントを見分けられるよう、アカウントの持ち主の本人性を示すためのものだった。しかし、次第にツイッターユーザーのアカウントが持つ影響力を示すサインとなっていった。
そこにマスクは別の価値を提案した。青いチェックマークはツイッターブルーのサブスクライバーに付与されることになり、広告の低減と新機能への早期アクセスを求めるユーザーのプレミアムメンバーシップの証とされた。
これは、ツイッターでパワーを持つユーザーにとっても一般ユーザーにとっても大きな変更であり、それに伴う混乱によってツイッター界は騒然とした。この騒動を受けて、マスクはツイッターブルーのリリースを遅らせ、他の種類のチェックマークを導入することをほのめかした。
プロダクトと新戦略との整合性を高めるには、リーダーは新たな価値提案を特定し、プロダクトのラインナップを大幅に見直して、新戦略の方向性について明確なシグナルを発する必要がある。アップルに復帰したジョブズは、既存のプロダクトラインナップの70%を切り捨て、斬新なiMac G3を投入することで、同社の価値提案を一新した。
当時、デスクトップPCの定番だった四角いグレーの箱型と違い、iMacは卵のような形で13色から選ぶことができた。iMacは、低価格コンピュータ市場から完全に撤退し、代わりにセクシーなインダストリアルデザインに注力するというアップルの意図を示すうえで、重要な役割を果たした(iMacの1ドル当たりの性能は犠牲にされたが)。
この方針転換には、1億ドルを投じた巨大な広告キャンペーンも含まれていた。それは、新たな戦略的方向性に本気で取り組むというジョブズの覚悟の表れだった。
ツイッターの場合、チェックマークシステムの刷新は、サブスクライバー重視の価値提案への移行を示唆するものだ。マスクは、金融や投資サービスの追加など、さらに急進的な変更についてもほのめかしている。
それらが功奏するには、ジョブズが低価格路線からインダストリアルデザインへと軸足を移したように、ツイッターも自社製品を新たな価値提案に整合させる必要がある。そして、アップルがiMacの広告キャンペーンを展開したように、新たな価値提案に真剣にコミットする必要がある。