忙しい人がリーダーシップのスキルを伸ばす方法
Shana Novak/Getty Images
サマリー:本稿では、日々忙しく仕事をこなすマネジャーがさらに成長するため、いかにリーダーシップを学ぶべきかを論じる。リーダーシップを学ぶうえで、体系的な学習は10%でよく、20%を自己発見に、そして残りの70%を実験... もっと見るに費やすべきだという。また、職場でのみ、リーダーシップを学ぶことができるという考えも誤解であると指摘する。有能なリーダーほど、家庭や地域、ボランティア活動など、さまざまなシーンでリーダーシップを学び、仕事に応用しているのだ。 閉じる

リーダーシップ能力開発のために体系化された学習は、学習全体の10%に留める

 学習と能力開発の時間を確保することは、リーダーシップの能力を伸ばすことを含め、みずからのパフォーマンスを高めたいすべての人にとって重要だ。しかし多くのマネジャーにとって、その時間をつくることは難しい。仕事の期限が迫っているし、日常業務をこなし、緊急のミーティングにも出席しなくてはいけない。リーダーシップの学習は後回しになりがちだ。しかし、自分を成長させることに、さほど多くの時間はかからない。むしろ、その大部分は日々の仕事の合い間にもできる。

 最新の研究によると、何らかの体系化された学習は、リーダーシップ能力開発の10%に留めるべきだ。残りは、実験(70%)と自己発見(20%)に費やすべきだという。しかしそれはどのようなものなのか。また、どのように始めればよいのか。エビデンスに基づき効果のあるアプローチをいくつか紹介しよう。

リーダーシップ能力開発

 まず、最も小さな割合に留めるべきリーダーシップ育成課程から考えてみよう。もしかすると、きちんとした授業を受けられるプラットフォームをすでにご存知の方もいるかもしれない。だが、どのような授業の動画でも、「再生」ボタンを押す前にやっておくべきことが2つある。

 まず、自分が身に付けたいリーダーシップの領域をおおまかに特定しておくことが重要だ。ただでさえ忙しいのだから、あまりに多くのことに同時にやろうとしないことだ。すでに手元にあるデータやフィードバックを見直そう。人事評価や、最近受けた360度評価の結果などでよい。自分が高めたい能力やスキルを最大でも2つまでに絞り込もう。

 第2に、自分にタイムリミットを設けることだ。あまりにも多くのことを、あまりにも急いでやろうとして重大なミスを犯すリーダーがよくいる。張り切って、いっきに1時間分のコンテンツを視聴して、あまりにも多くのアイデアやヒントに圧倒され、やる気を失ったり、実行しても結果が出ないことに落胆したりする。これは長期的なプロセスであることを覚えておこう。短期間に激しく活動するよりも、小さなアクションを毎日積み重ねるほうが、長期的な効果ははるかに高いのだ。

 幸い、多くのオンラインプログラムは短い動画で構成されており、1日3~5分程視聴すればよい。自分が特定した能力開発分野に合ったコースを見つけよう。そして1日に1~2本の短いビデオを見ると決める。もちろん、ただ視聴するのではなく、重要なポイントや、自分の日常で実践する方法についてはメモを取るなどして自分の記憶にきちんと刻み込もう。

自己発見

 自己発見は、リーダーシップ能力開発の20%を占めるべきだ。体系的な学習の課程に費やす時間が1日10分以内であることを思い出してほしい。自己発見に費やす時間は、それよりも少しばかり多くなる。幸い、これは平日の日中にできる。

 他のリーダーを観察するだけでよいのだ。あなたの組織で、あなたの伸ばしたい領域と一致する能力を示しているリーダーを探そう。そして、彼らが何をどうやっているか観察する。チャンスがあるなら、ある行動をとった理由を直接聞いてみよう。ただし無理強いはしないこと。私たちは自分がなぜ特定の行動をとったのか意識していないことが多い。ここでも、ただ眺めているのではなく、メモを取り、どうすれば自分で実践できるか考えよう。

実験する

 リーダーシップ能力開発で、時間的に最大の割合を占めるべきなのは実験だ。科学者のように考えて、自分の典型的な行動を修正する小さな実験をしてみよう。オンラインコースで学んだことや、他のリーダーを観察して学んだことを応用してみよう。

 たとえば、部下と難しい話をしなければならない時、通常は取らないアプローチを試してみよう。部下とミーティングに入る前に、具体的に何をするか決めておく。それを実践して、結果を観察する。もし、うまくいかなかったら、いつもの方法に戻ればよい。そして次の実験を試すのだ。

 筆者の研究によれば、実験は、リーダーとしてのアイデンティティや自己認識を強化するうえで決定的に重要になる。時間が経つにつれて、新しい形の振る舞いが、自然に定着していくだろう。

 実験は、リーダーシップ能力開発に費やす時間で最大の割合を占めるが、あなたが毎日やっていることに統合されるため、それを記録し、見直す時間を設けることが重要になる。何を試し、それがどのような効果をもたらしたかを記録しよう。自分の考えや反省を記録するために、日記を書く習慣も試してみよう。

よりよいリーダーになる

 リーダーシップ能力開発は、仕事の一環として継続的に取り組むものと認識されるべきだ。時間がある時に集中的に取り組むのも結構だが、そういう時間が毎日あるとは限らない。だからといってスキルを伸ばすことができないわけではない。よりよいリーダーになるために必要なのは、目標に対する献身的な姿勢とわずかな時間の投資だけでよいのだ。

 それでも大きな負担に感じられるなら、覚えておいてほしい。私たちは、リーダーシップ能力開発は職場でしか実現しないと誤解している。研究によると、最も有能なリーダーは、いつでも、どこでも学んでいる。親であること、地域のスポーツチームの選手であること、ボランティアであること──こうした役割はすべて、リーダーシップの要素を持っている。さまざまな役割の中で、リーダーシップについて何を学べるか考え、別の環境で行動実験を行い、その学びが自分の仕事の役割の中でどのように活かすことができるか考えてみよう。そうすれば、あなたが特定した領域で、リーダーとしての能力開発を加速させられるのは間違いない。


"How Busy People Can Develop Leadership Skills," HBR.org, December 07, 2022.