インフレを計測する方法
インフレの計測方法には、さまざまなものがある。すべてに共通するのは、さまざまな商品やサービスの価格推移を把握しようとすることだ。最もよく用いられるのは、「消費者物価指数」(CPI)である。CPIは、家計が購入する代表的な商品群の価格を追跡調査して算出する(指数は、消費者の購入量に応じた加重平均)。CPIが上昇すると、世帯が購入する商品の値段が平均して上昇する。
エコノミストは、CPIよりも「コアコアCPI」を好む場合が多い。これは、CPIから食品とエネルギーを除外した指数である。この2つを除外するのは、価格変動が激しいためだ。この両カテゴリーを除いて平均物価の水準を見ることにより、物価上昇が起きているかどうかを判断しやすくなる。
このほかにもインフレの計測方法はいくつかある。たとえば、「生産者物価指数」(PPI、企業の仕入れ金額を計測する)や、「個人消費支出(PCE)指数」(
いま起きているインフレの原因は
この1年半ほど続いてきたインフレは、供給サイドと需要サイドの両方に原因がある可能性が高い。供給サイドでは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる物流の停滞と労働力不足が起きていたところに、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー・食料価格の急上昇が追い打ちをかけた。エネルギーコストと物流コストの上昇により、多くの商品やサービスの価格が想定外に跳ね上がり、その影響は経済全体に波及した。
一方、需要サイドでは、多くの国の政府がコロナ禍に莫大な資金を家計と企業に注入したことの影響が大きい。家計と企業がロックダウン(都市封鎖)とレイオフに対処するのを助けることが目的だった。この措置により、マネーサプライが増加し、インフレが助長されている可能性がある。
コロナ禍において、物理的な商品への需要は目を見張るほど増加した(ペロトンの在宅フィットネス用バイクを購入して、いま埃をかぶっている人も多いのでは)。これは、財布の中の現金が増えたにもかかわらず、レストランでの食事やその他のサービスに使う機会がなかったためだ。
これらの要因がそれぞれどのくらいインフレに寄与しているのか、確かなことは誰もわからない。しかし、ニューヨーク連邦準備銀行のエコノミストたちの推計によると、2021年の物価上昇の40%は供給サイドの要因、60%は需要サイドの要因によるものだという。
いつインフレは沈静化するのか
この点についても、確かな答えを持っている人はいないが、本稿執筆時点で示されている予測をいくつか紹介しよう。
・FRBは、2022年にインフレがピークに達し、2023年は物価が下落しはじめるとの予測を示している。しかし、物価上昇率が目標の2%に落ち着くには2025年までかかるとのことだ。
・投資銀行大手モルガン・スタンレーのエコノミストたちの予測によれば、世界のインフレ率は2022年第4四半期がピークになるという。
・投資銀行大手ゴールドマン・サックスのエコノミストたちの予測によれば、「コアPCE」(米国商務省が発表する個人消費支出価格指数)のインフレ率は、2023年に大幅に下落し、前年比約5%から3%に低下するという。