あなた自身が部下の生産性を下げる要因になっていないか
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サマリー:部下が仕事を終わらせるのに予想以上に時間がかかり、能力やモチベーションが足りないのではないかと疑ったことはないだろうか。実際には、無意味なミーティングや終わりのないメールに対応するために、集中すべき時... もっと見る間が中断されていることが原因だ。そして、あなた自身がその原因になっている可能性が高い。本稿では、マネジャーが部下の妨げになることなく、仕事に集中できる職場をつくるための4つの方法を紹介する 閉じる

部下を「監視」しても、生産性は高まらない

 企業が従業員を監視していることは、いまや秘密でも何でもない。

 最近の『ニューヨーク・タイムズ』紙の記事によれば、米国最大の企業10社のうち8社が、追跡ソフトウェアを使って従業員を監視しているという。『ワシントン・ポスト』紙によると、世界の従業員監視ツールの需要は、2019年から2022年の3年間で65%上昇した。

 リモートワークの拡大で、企業リーダーは偏執的になり、従業員の仕事におけるデジタルに関する行動は、逐一監視しなければならないと考えるようになった。

 従業員生産性ソフトウェアはしばしば、従業員が送信したメールの数や出席したオンライン会議の数、PCのキーボードを打つことに費やした時間など、無価値な指標を測定する。一方、思考や紙面上の読み書きに費やした時間のように、PCを使わないタスクは追跡せず、成果や結果を測定しない。生産性ソフトを提供する企業のリーダーでさえ、自社のアプリをそのように使うことを認めていないくらいだ。

「『送信したメッセージの数』といった表面的な活動に基づいて生産性を測定することは、その人物の組織への貢献を著しく限定的に見ることになる」と、スラック・テクノロジーズでシニアバイスプレジデントを務めるブライアン・エリオットは『ワシントン・ポスト』紙に語っている。「それは恣意的であるだけでなく、逆効果であることが少なくない」

 自分のパフォーマンスが、生産性ソフトウェアのルールによって測定されていることを知ると、従業員は中核業務よりもメールやメッセージの処理を優先するようになる。

「これはひどい『反応性の循環』を永続させる」と述べるのは、コンサルタントから転じてハーバード・ビジネス・スクール教授としてリーダーシップ論を担当するレスリー・パーローだ。著書Sleeping with Your Smartphone(未訳)に記している。

 反応性の循環とは、従業員が仕事の「需要」に適応する際に生じる現象だ。つまり、自分が使うテクノロジーに応じて、毎日のスケジュールや仕事のやり方を変え、自分の生き方や家族や友人との関わり方さえも変えることによって、自分の時間に対する要求の高まりに応じようとする時に起きる。

 マネジャーには、会社が生産性向上を目的とするソフトウェアを導入するかどうかについて発言権はないかもしれない。しかし、自分のマネジメントスタイルが生産性向上のためのソフトウェアと同じようなメッセージを発していないか検証することはできる。以下について、自問してみてほしい。

・相手があなたのメールに、ほぼ即時に返信することを期待している。
・進捗情報を定期的にアップデートするように求めたり、「私のメールを見てくれたかどうかだけ、確認したい」というメールを送ったりしている。
・従業員のニーズを考慮せず、自分のスケジュールを中心にチェックインの時間を決めている。
・何の議題もない「ブレインストーミング」を計画している。

 上記の質問に対して、一つでも「イエス」と答えたなら、あなたは部下の生産性を高めるどころか、むしろじゃまをしている可能性が高い。そのやり方を変えて、従業員が仕事のじゃまをされない職場をつくるための4つの戦略を紹介しよう。