新製品を導入する
新年は、新規顧客を獲得する絶好のチャンスだが、同時に既存顧客に新製品や新たな買い物体験を試してもらう最高のタイミングでもある。たとえば、種苗会社のテリトリー・シーズ・カンパニーは2023年1月初旬、花の種の新商品を紹介するメールを顧客に送信した。女性用ビジネスファッションブランドのエムエムラフルールは、「2023年のトレンドをリードすると共同創業者が確信している」新ラインを発表した。
主力製品を抜本的に変更する必要はないが、新年のタイミングで新たな選択肢を前面に打ち出したプロモーションを行うと成果が上がりやすいことが、筆者らの研究で明らかになっている。新製品の発売や新機能のリリース、あるいは店舗内のレイアウト変更だけでも検討すべきだ。
まさにいま、顧客が新たな挑戦に前向きになっているタイミングで、彼らが欲する「目新しさ」を提供しよう。
顧客ロイヤルティを育てる
あなたの会社のブランドや製品を試してみようとする人がいるとすれば、その裏返しとして、あなたのブランドに見切りをつけて競合他社に乗り換えようとする人がいても不思議ではない。たとえ特段の不満がなくても、新規顧客が自社製品に引き寄せられるのと同じ「新しい出発」のマインドセットによって、既存顧客が別の選択肢に流れてしまいかねないのだ。
ロイヤルティの高い顧客との関係を深める取り組みは、どのような時でも必要だが、新年のタイミングでは特に、それが決定的に欠かせない。
これはつまり、あらゆる手を尽くして、顧客との間に強力でパーソナルな関係を築く必要があるということだ。結局のところ、個人的な愛着を感じるブランドほど切り捨てにくいものだからだ。
たとえば、ペット用品のネット通販を手掛けるチューイーは、新年を迎える数週間前に、すべての主要顧客に手書きのホリデーカードを送っている。全員に同じカードを送付する大手小売企業が多い中、パーソナライズされた手書きのカードはブランドの存在感を際立たせ、顧客との間にリアルなつながりの感覚を育んでくれるものだ。
加えて、リワードプログラムも顧客ロイヤルティを高める効果的な戦略だ。これは、単に金銭的なインセンティブを用意してリピーターを増やすという話ではない。
リワードプログラムが顧客とブランドの関係強化に役立っていること、そして消費者は物質的な報酬よりも体験的な報酬を重視していることが、研究によって示されている。だとすれば、単に割引やプロモーションを実施するのではなく、映画のチケットや限定コンテンツへのアクセスなど、顧客がブランドとのつながりを強く感じられる体験を盛り込んではどうだろうか。
たとえば、オンライン旅行会社のエクスペディアは「2023年版 死ぬまでに行きたい最高の旅先リスト」を会員に提示し、この「厳選された旅」を得意客だけに特別価格で提供している。