企業が提供できるものを強化する
報酬と福利厚生
給与を引き上げることで人材獲得競争に勝とうとする雇用主は多い。あなたもそのような一人だろうか。筆者らが800人以上を対象に行った調査では、回答者の半数が従業員の報酬を引き上げていると答え、約75%の雇用主が、人件費引き上げの主な要因として人材不足を挙げた。
だが、報酬と福利厚生を強化する手段は、給与の引き上げだけではない。手始めに以下の手法を試してみよう。
・介護者支援プログラムや育児サービス、ウェルネス特典など独創的な福利厚生を提供する。
・人材確保が難しい層のニーズに合った福利厚生を開発する。
・特に低賃金労働者に対して、ピーク時のボーナス積み増しや昇格時のステップアップなどのインセンティブを用意する。
・すべての従業員に医療給付と適切な病欠を保証する。
・特に低賃金労働者に対して、予測可能で安定した給与を保証し、変動の余地を小さくする。
ワークデザイン
新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、人々の仕事への考え方は根底から変わった。パンデミック以降、柔軟な働き方の重要性が急激に高まり、10%の昇給よりも柔軟性を重視する社員もいるほどだ。ワークデザインを再考することは、労働者を引き付け定着させるためだけでなく、生産性を高め、労働者の能力を最も価値の高いタスクに集中させることにもつながる。以下の戦略を活用して働き方の再設計に着手しよう。
・仕事を要素ごとに分解して、チームやフリーランサーの責任分担を明確にし、人材獲得に対するアプローチを改善する。
・スキルベースの人材プールを作成し、重要な優先課題に必要に応じて割り当てることで、よりダイナミックに人材を配置する。
・低賃金労働者のシフト変更の柔軟性を高めながらも、十分なカバー率を確保できるよう、スケジュール管理とシフトの再設計を進める。
・コンプレストワークウィーク(1日当たりの就業時間を長くして就業日数を減らす勤務形態)、複数のパートタイム従業員によるワークシェアリング、「ラッシュアワー」をカバーする分割シフトなど、さまざまなフレックス勤務モデルを試す。
・重要性の低い職務の廃止や担当変更、自動化を進め、働き方を再設計する。
・言語支援や年配の労働者向けツールなど、働きやすさを改善するテクノロジーを導入する。
キャリア開発
従業員に実力以上の仕事をあえて任せるストレッチアサインメントの機会を提供できれば、能力開発だけでなく、従業員の定着にも有益だ。ピュー・リサーチセンターによれば、米国の従業員の60%以上が、離職の主な理由としてキャリアアップの機会がないことを挙げたという。組織におけるキャリアアップの機会を増やすために、以下のような革新的な取り組みを採り入れてみよう。
・個人のスキル開発計画と連動した学習手当を支給する(授業料の払い戻しなど)。
・目標を絞った学習・開発プログラムを構築し、ハードスキルとソフトスキルの両面でオンボーディング、スキルアップ、リスキリングを支援する。
・メンターシップ、スポンサーシップのプログラム、ピア・ツー・ピアのコーチングシステムを設計する。
・マネジャーが優れた「ピープルリーダー」になれるようスキルアップを促し、チーム開発に対するマネジャーの説明責任を向上させる。