
リーダーが直面するジレンマの代償
職場で見せる感情については、不文律が存在する。そうした感情に対する暗黙のルールは、組織の社会構造に深く根づいているため、私たちがその存在に気づくことはほとんどない。
しかし、自分の感情と期待される感情が一致しない時がある。自分の真の感情を表して「本当の自分」になるべき時と、平然とした顔をして期待されている感情を表すべき時を、どう判断すればよいのだろうか。
リーダーの役割は人目を引くことから、このジレンマにしばしば直面する。たとえば、法務担当のシニアリーダーであるジョンは、仕事の進め方について顧問弁護士と意見が大きく異なっていたが、チームを上手にまとめることを期待されていた。ダラは、自分が築き上げた組織を手放したくないと思っていたが、組織再編の一環として、別のリーダーに快く引き継ぐことを期待されていた。
このような感情面での要求に対処するために、リーダーは「表層演技」をすることで、実際の感情を隠して、別の顔を装う。そして、この感情労働の負担は、かつてないほど大きなものになっている。
リーダーは、自分の考えや感情をすべて表に出すと、信頼性や有効性を失うおそれがある。現実問題として、女性や有色人種の場合は特に当てはまる。
しかし、感情を抑圧することもまた、代償を伴う。表層演技のストレスによって、リーダーは肉体に痛みを感じたり、不眠症や燃え尽き症候群(バーンアウト)、抑鬱状態に陥ったりする。また、そのような労力を費やすことで自制心が弱まり、職場で暴言を吐くことも増える。その結果、組織のエンゲージメントレベルや離職率、業績に影響を与えてしまうのだ。
では、どのような対処法があるのか。リーダーはいかにして、真の感情を見せるという危険な橋を渡ることができるだろうか。次に自分の感情と期待される感情が対立した時、試してほしいテクニックがいくつかある。以下に紹介しよう。