リーダーとしての役割と自分の感情が一致しない時、どう対処すべきか
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サマリー:職場で自分の感情をそのまま表に出すのは、周囲の信頼を損なうおそれがあるため、避けるべきだという暗黙のルールがある。だが、感情を抑圧して、平然とした顔を装う「表層演技」を続ければ、そのストレスによってネ... もっと見るガティブな影響が生じるのも事実だ。では、リーダーが周囲から期待される役割と自分の感情が異なるというジレンマを抱えた時には、どう対処すべきなのか。本稿では、リーダーが自分自身の健康を守り、高いパフォーマンスを発揮するために、それらのジレンマに対処する4つのテクニックを紹介する。 閉じる

リーダーが直面するジレンマの代償

 職場で見せる感情については、不文律が存在する。そうした感情に対する暗黙のルールは、組織の社会構造に深く根づいているため、私たちがその存在に気づくことはほとんどない。

 しかし、自分の感情と期待される感情が一致しない時がある。自分の真の感情を表して「本当の自分」になるべき時と、平然とした顔をして期待されている感情を表すべき時を、どう判断すればよいのだろうか。

 リーダーの役割は人目を引くことから、このジレンマにしばしば直面する。たとえば、法務担当のシニアリーダーであるジョンは、仕事の進め方について顧問弁護士と意見が大きく異なっていたが、チームを上手にまとめることを期待されていた。ダラは、自分が築き上げた組織を手放したくないと思っていたが、組織再編の一環として、別のリーダーに快く引き継ぐことを期待されていた。

 このような感情面での要求に対処するために、リーダーは「表層演技」をすることで、実際の感情を隠して、別の顔を装う。そして、この感情労働の負担は、かつてないほど大きなものになっている。

 リーダーは、自分の考えや感情をすべて表に出すと、信頼性や有効性を失うおそれがある。現実問題として、女性や有色人種の場合は特に当てはまる。

 しかし、感情を抑圧することもまた、代償を伴う。表層演技のストレスによって、リーダーは肉体に痛みを感じたり、不眠症や燃え尽き症候群(バーンアウト)、抑鬱状態に陥ったりする。また、そのような労力を費やすことで自制心が弱まり、職場で暴言を吐くことも増える。その結果、組織のエンゲージメントレベルや離職率、業績に影響を与えてしまうのだ。

 では、どのような対処法があるのか。リーダーはいかにして、真の感情を見せるという危険な橋を渡ることができるだろうか。次に自分の感情と期待される感情が対立した時、試してほしいテクニックがいくつかある。以下に紹介しよう。