1. 状況を再評価する

 自分の感情と期待されている感情が一致しない時、表層演技よりも健全かつ効果的なのが「深層演技」だ。このテクニックでは、期待されている感情を感じる正当な理由を見つけることで、偽る必要性がなくなる。

 たとえば、ダラの場合、組織を別のリーダーに引き渡す際には、温厚な態度で協力すべきであると理解はしていたが、自分が評価されていないと感じて、激しく動揺した。この矛盾に対処するために、ダラはこの状況の利点を考えるようにした。つまり、自分にとって新しいことをする機会であるとリフレーミングしたのだ。状況を再評価することで、ダラは自分の感情の状態を変化させ、期待される感情を心から表すことができるようになった。

 共感も、リフレーミングや深層演技に役立つ。自分のチームが重要な成果物を完成させようと必死になっている時、あるメンバーが家族の緊急事態で1週間の休暇を求めてきたとしよう。それを聞いたあなたは「信じられない」と感じて、「いまからどうやって、この仕事を終わらせることができるのか」とパニックに陥るかもしれない。しかし、チームメンバーの目線に立って状況を見ることで、心から相手のことを心配し、思いやりを示すことができる。

 深層演技には認知努力が必要であり、一歩下がって再評価する時間がかかることから、常にできるものではない。しかし、研究によれば、深層演技をする人は表層演技をする人と比べて疲労が少なく、本当の自分ではないと感じることも少なく、同僚からの信頼は高く、キャリア目標に向かって前進していることが示されている。

2. 重要なことに集中する

 深層演技のもう一つのテクニックは、自分の仕事の大きな目的に重点を置くことだ。自分の仕事によって恩恵を得る人々に焦点を当てると、エネルギーが生まれ、バーンアウトしにくくなる。

 たとえば、ジョンは自分の尊大な態度や失望の表現が、チームにネガティブな影響を与えていることに気づいた。そこで、透明性に関する自分の価値観を優先するのではなく、チームのニーズを考えることで、メンバーから求められるリーダーとしての姿を見せることに偽善ではなく、喜びを感じられるようになった。

 焦点を変えるには、一歩下がって、なぜ自分の仕事が重要なのかを考えることが欠かせない。自分の仕事はチームメンバーや顧客、より広範なコミュニティにどのような影響を与えるのか。大切な人のためにポジティブな成果を生み出すことは、ある種の感情を表に出すことの負担やネガティブな影響を軽減する。