
CDOが抱える課題
最高データ責任者(CDO)という役職は2002年に誕生したばかりだが、その後は著しく増えている。大企業を対象とした最近のあるアンケート調査では、83%がCDOを置いていると回答した。これは意外ではない。データ、およびデータを理解する手法(アナリティクスとAI)は、現代の組織では非常に重要だ。
とはいえ、CDOの仕事の定義が極めて不明瞭であることには驚かされる。後述する調査の中でCDOの62%は、CDOの役割は十分に理解されていないと回答している。そして現職者は往々にして、あまりに広範な役割を期待され、在任期間が短い。CDOは、目に見える価値を組織に付加することに注力する必要がある。この点は明らかだ。
問題の一端は、従来のデータマネジメントのアプローチ自体が、目に見える価値を提供しにくいことだ。非技術系の経営幹部の多くはCDOの仕事をよく理解しておらず、仕事が適切に遂行されていても、その事実をなかなか認識できない。CDOはしばしば、データの問題を防ぐこと(防衛重視の施策)に注力するよう求められる。そしてデータマネジメントの取り組みの一環として、データアーキテクチャー、データガバナンス、データ品質を向上させることも要求される。
しかし、データはけっして完璧にはならないものだ。したがって経営幹部らは、組織のデータ状況について常にある程度の不満を抱くことになる。データマネジメントの向上は認識や測定が難しい一方、ハッキングや漏えい、消失したデータ、アクセス不可能なデータ、低品質なデータといった大きな問題は、その向上よりもはるかに認識しやすい。
ではCDOはどうすれば、自分が価値を創出していることを実証できるのだろうか。データが会社に価値をもたらす主な方法は、
このことを主な焦点として、アマゾン ウェブ サービス(AWS)の後援による調査プロジェクトが先頃実施され、筆者ら3人もこれに協力した。ここに含まれるのは「マサチューセッツ工科大学(MIT)最高データ責任者・情報品質シンポジウム」に参加した250人のCDOへの大規模なアンケート調査と、25人の著名なCDOへの詳細なインタビューである。
調査対象のCDOの41%は、事業目標の達成を成功の定義としていた。これは、チェンジマネジメントや組織文化の改革(19%)、技術面の成果(5%)、データをめぐる深刻な問題の防止(2%)、これら3要素すべて(32%)を成功の尺度とした人よりも格段に多い。
本調査における知見に基づいて、複数の価値創出の手段を以下で説明していく。最初に、あらゆるタイプの組織に有効なアプローチをいくつか提示する。次に、CDOを擁する企業のアナリティクスとデータマネジメントの成熟度に依存するアプローチについて述べる。