CDOはいかにして価値を創出できるのか

アナリティクスとAIに関する責任を負う

 この施策は最も大きな価値をもたらすと考えられる。調査対象のCDOの35%は、少数の重要なアナリティクスやAIプロジェクトへの注力が、最大の価値をもたらすと信じている。またCDOの過半数(64%)は、データやアナリティクス、AIを用いた新規事業の実現を後押しすることに時間を費やしている。

 これにより彼らは、公式であれ非公式であれ、最高データ・アナリティクス責任者を担うことになる。CDOのバリエーションとして急速に増えつつある職務だ。インタビューでは複数のCDOが、データの供給と需要の両方を管理する組み合わせは、価値提供に効果的であると述べた。

成熟度が低い場合は、ステークホルダーにとって有益な少数の重要プロジェクトに注力する

 組織がデータとアナリティクスの取り組みを始めてから日が浅い場合は、主要なステークホルダーと協議したうえで、開発すべきアナリティクスとAIのユースケースを精選しよう。それらのプロジェクトが無事に実装されるよう、CDOが万全を期す必要がある。

 なお、実現不可能なことを試みてはならない。特定の分析アプリケーションやAIのユースケースを開発する中でのみ、データ環境を見直せばよい。そうすれば事業部門のリーダーは、見直され続けるデータとビジネス価値とのつながりを理解できる。

データプロダクトに注力する

 データプロダクトとは、顧客や従業員のために特定の成果を実現することを目的とした、データとアナリティクスやAIの組み合わせである。例として、資産管理サービスの顧客が貯蓄を使い果たすことがあるかを判断する新しいシミュレーションモデルや、従業員の離職を予測するアトリションモデルなどが挙げられる。

 アナリティクスに基づくデータプロダクトに注力し、その中で概念化から実装、継続的なメンテナンスまで、すべての活動を包括的に行うことが、価値創出を実現するための効果的な方法となる。プロダクトに焦点を当てることで、データサイエンティストやデータエンジニアなどを含むデータプロダクトチームは、アルゴリズムをつくるだけでなく、事業に不可欠なアプリケーション全体の実装に向けて協働することになる。

 調査ではCDOの39%が、「プロダクトマネジャーと協働してデータプロダクトマネジメントの志向を取り入れている」と回答した。この概念は比較的新しいため、データプロダクトへの注力をすでに実践しているCDOが多くいることは意外である。

 リージョンズバンクで最高アナリティクス・データ責任者を務めるマナブ・ミスラは、彼のチームが開発する個々のデータプロダクトが首尾よく実装され、自社への価値が綿密に測定されるよう万全を期している。各データプロダクトについて四半期ごとに運営委員会で会議を開き、そこで事業部門のチーム──データプロダクト開発の後ろ盾となった事業部や機能部門のリーダーたち──が報告を行い、ミスラのチームがその場に出席する。

結果を測定し記録する

 CDOは重要なプロジェクトの結果と価値を、時には財務部門との協働の下、綿密に測定することで、価値の実証と周知がしやすくなる。

 印刷・デザイン会社のビスタでCDOを務めるセバスチャン・クラップドアは、データプロダクトを強く推進する一人であり、自社のすべてのデータプロダクトが成果をもたらすよう万全を期している。その手段として、全データプロダクトを四半期ごとに査定し、金銭的利益に関しては必ず財務部門から正式な承認を取り付ける。彼のCDO部門はわずか2年のうちに、9000万ドルの増分利益を記録した。2021年の売上高が15億ドルの会社にしては、みごとな数字である。

 また一部のCDOは、データおよびデータ主導のビジネス成果に関する自部門の実績と価値を示すために、オンラインのダッシュボードを構築している。