職場のやっかいな人から自分を守る方法
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サマリー:職場には、周囲に迷惑をまき散らすやっかいな人がいるものだ。しかし、そうした人に腹を立てたり恨んだりするのではなく、許すことが大切である。なぜなら、恨みやネガティブな感情は自分の健康にダメージを与えるお... もっと見るそれがあるからだ。本稿では、多くの人が「許す」という感情を持ちにくい理由を解説したうえで、相手を許すためのステップを紹介する。 閉じる

なぜ腹の立つ同僚を許すべきなのか

 職場とは、個性がぶつかり合う場所であり、なかには相手をイラつかせ、困らせる人もいる。うまくやれば、私たちはそうした人とも礼儀正しく対話を重ね、彼らの言動が及ぼす影響(おそらくは本人が意図していない)について自覚するよう促せるだろう。そして、もし自分が迷惑な言動をしてしまっているのなら、態度を改めるきっかけになるよう、周りの人たちにも同じように自覚を促してほしいと願っている。

 しかし、相手の攻撃的な行動が今後も収まることのなさそうなケースもある。そのような時はどうすればよいのだろうか。

 問題の人物は、口が達者だったり、自己顕示欲が強かったり、あるいはテンションが高すぎたりする。面白くもないジョークを飛ばしては周囲の愛想笑いを誘う人、やたらと人の話をさえぎる人、いつも会議に遅刻する人、注目を浴びたくて仕方のない人、受け身なのに攻撃的な人、すぐに不機嫌になる人、キレやすい気分屋……。人事・HR部門に報告するような問題を起こすわけではないものの、彼らの言動にはあなたの毎日を不愉快なものにする要素が満載だ。

 彼らは問題点についてすでにフィードバックを受けており、しばらくの間は態度を改めることもあるが、いずれまた本性が露わになる。あなたが夕食の席で彼らについて愚痴をこぼしたことは数知れず。同僚とこっそり連携して、不愉快な言動をする相手を孤立させようと画策したこともあれば、彼らが退職したり解雇されたりする、あるいはそれ以上に深刻なシナリオをひそかに妄想したこともあるのではないだろうか。

 しかし結局、状況は何も変わらず、あなたは今日も彼らの腹立たしい言動が気になって仕方がないはずだ。

 筆者は先日、元クライアントのエグゼクティブチームのリーダーを務めるマーク(仮名)と話をする機会があった。同僚のエイデン(仮名)について相談したいということだった。

 エイデンは全体的に見ればまともな男で、愛すべき性格と優秀さを備えているが、人をいら立たせる言動が散見されるという。たとえば、簡単な質問をされただけなのに、10~15分以上かけて詳細に回答し、自身の専門分野について見解を求められた場面では、プレゼン用のスライドを何十枚も用意していたという。マークは次のように愚痴をこぼした。

「自分を賢いと思わせたいのか、賢そうに見えないと不安なのか、他の人が自分より詳しいことを恐れているのか、それとも単なる仕切り屋なのか、私にはわかりません。いずれにしても、彼のせいでチーム全体が疲弊しています。さらに簡潔に話すよう伝えたこともありますし、上司は彼にエグゼクティブ・ブリーフィングのコーチングまで受けさせたこともあります。私は必要な情報を入手するために彼の部下に直接接触するようになったのですが、それが引き金となって、彼は部下をマイクロマネジメントするようになってしまいました。どう対応すればいいのでしょうか」

 筆者が知っているマークは冷静沈着で、感情のバランスが取れた、聡明で信念のある人物だ。そのような彼がこれほど怒っている様子は異様に感じられた。

 組織には自分ではコントロールできない頭痛の種がいろいろとあるものだが、その中でもマークがエイデンの言動に特にいら立ちを感じるのには何か理由があるのではないか。そう考えた私は、その点を確かめるために、マークに質問をぶつけてみた。「あなたの感情の奥にはいくつもの不満があるようですが、エイデンの行動の中で最もいら立ちを感じるのはどのようなことですか」

 私が知りたかったのは、エイデンの言動によって、マークのコアバリューの一つが何らかの形で傷つけられているのではないか、ということだった。たとえば、必要な情報を聞き出すのに時間がかかりすぎるという事実が、タイムリーさと効率性という彼のコアバリューを脅かしていたのかもしれない。

 マークは少し黙ってから、こう言った。「彼は行動を改めるよう言われ、改めると約束したのに、変わっていない」。つまり、マークは自分が大切にしてきた「約束を守る」という価値観が侵害されているように感じていたのだ。

 さらにいくつか質問を重ねたうえで、筆者はマークにこう尋ねた。「もしもあなたがエイデンだったとしたら、チームに何を望みますか」