1. チームワークを必須とする

 アドバイザーを採用する際、一流企業の出身者や立派な経歴の持ち主を選びたくなるかもしれないが、これらの資格はパフォーマンスを保証するものではない。その代わりに、アドバイザーを選ぶ際には、互いを尊重し、他者と上手に組める能力が譲れないポイントであることを強調する。あるアドバイザーの話によると、「チーム内の力関係や、他人と協力して仕事をするという評判が、案件で選ばれるかどうかを決める重要な要素になることが多い」そうである。

2. 責任の所在を明確にする

 対立の可能性を最小限にするため、アドバイザーに特定のタスクを明確に割り当て、「(各アドバイザーの)プロジェクト範囲を継続的に明確にする」ための社内オーナーを任命して、分業体制を強化する。もし、アドバイザーが互いに足並みを乱し始めたら、CFOやCEOに助けを求め、全員が軌道に乗るようにすることを恐れない。

3. 最初からシニアリーダーを参加させる

 交渉の後半で問題が発生する場合、多くの場合、初期段階でのずれが原因である。アドバイザーに一貫した指示を与え、ディールを成功に導くためには、シニアリーダーが最初から積極的に関与することが重要である。ある企業のM&A担当責任者は、「スタートで失敗して、ゴールで後悔するようなことは避けたい」と強調する。

4. インセンティブを整合させる

 多くのアドバイザリーファームは、従来の「No Cure, No Pay」のインセンティブ構造で運営されている。つまり、案件が成立しなければ、アドバイザーに報酬は支払われない。しかし、筆者らの調査によると、このようなアプローチはチームワークや意思決定の質を低下させる可能性がある。

 インタビューで挙がった一つの提案は、「顧客満足度ボーナス」と呼ばれる報酬体系を採用し、成果に応じて合意した顧問料よりも若干多く(ボーナス)、または少なく(マルス)支払うオプションを設けることで、「利益相反を避け、(顧問の)客観性を守る」ことができるという可能性である。

 最適な報酬体系は案件の内容によって異なるかもしれないが、従来の仕組みを見直すことで、インセンティブを調整し、最終的に全員に害を及ぼす日和見的な行動を抑制することができるだろう。

5. 成功から学ぶ。そして失敗からも学ぶ

 どのような結果であっても、すべての取引は、将来の成功の可能性を高めるために学ぶ機会である。その機会を活かすために、プロジェクトを通じて関係者全員から積極的にフィードバックを集め、アドバイザーや自分の同僚、カウンターパートとの間で、教訓を得るためのセッションや事後レビューを企画することである。

 たとえば、あるM&Aの責任者は、非公式であれ、より体系的であれ、「(アドバイザーとの)関係ごとに、今後の選択に役立つような状況を記録しておく」と述べている。そして、この貴重な情報を収集し、文書化したら、効果的なベストプラクティスを制度化し、自分やチームが悪い習慣に逆戻りしないような仕組みを構築するために利用しよう。

6. 人間関係に投資する

 あるインタビューによると、「これはファーストネームビジネスである」という。信頼できるアドバイザーと長期的かつ個人的な関係を築くことは、単にミスアラインメントのリスクを減らすだけでなく、非協力的でエゴの塊のようなアドバイザーの仲介に多大なリソースを浪費するリスクを減らすことになる。

 あるアドバイザリーファームのパートナーは、「ディールでは、共通の未来があることを示すことが重要だ」と話している。同様に、あるM&A担当者は、「M&Aを数多く手掛ける者として、我々は最高の相手としか仕事をしませんし、彼らの優先順位は1番です。毎回、ビューティ・コンテストで時間を潰すわけにはいかないし、日和見的な行動にも興味はないのです」と述べる。

 あちこち見て回りたくなるのが人間の性だが、最も成功するディールは、すでに一緒に仕事をし、真の意味で持続的な関係を築いた経営者やアドバイザーによって行われる傾向にある。

 M&Aアドバイザリー業界は非常に競争的である。彼らの思考ルーチンとインセンティブは、一般的に、コラボレーションではなく、個人のパフォーマンスを最大化することに向けられている。そのため、M&Aアドバイザーをうまく活用することは極めて難しく、株式市場の評価に反映されるのは当然のことである。しかし、私たちの調査によれば、それはけっして不可能ではない。

 それどころか、チームワークと長期的な成果を念頭に置いて管理されれば、複数のアドバイザーは実際に大きな価値をもたらすことができる。M&Aという複雑な台所では、複数の料理人と付き合うことが必要なだけでなく、成功のための最良のレシピとなることも多い。