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新規雇用された幹部の46%が1年半以内に挫折
フィンテック企業のバイスプレジデントに採用されたキャシー(仮名)は、影響力を持ちたいと考えていた。改善できる箇所を見つけ、それらを変えていく方法も考えついた彼女は、早く仕事に取りかかりたくてうずうずしていた。まるで救世軍の兵士(クルセーダー)のようにみずからの信念に根づく情熱に突き動かされ、変革を起こそうとした。自分の考えを熱く語り、チームミーティングで熱のこもったスピーチをした。また、問題点や改善できる点を大胆に指摘した。臆することなく「権力者に真実を語る」存在として、チームで声を上げにくいメンバーや下位のメンバーの擁護者にもなろうとした。
その結果、短期的な変化につながることもあったが、総じて何の対策にも至らず、いら立つことのほうがずっと多かった。さらに悪いことに、こうしたアプローチによって、キャシーは次第に組織の中で孤立し、そのせいで変化を起こすことがますます難しくなるという悪循環に陥ってしまった。本稿の筆者の一人である、ベラスケスのかつての顧客の実話である。
今日のように変化のペースが速い企業環境では、組織に新たに加わった経験豊富なリーダーはたいてい、早期に大きなインパクトを与え、有意義な変化をもたらそうと意気込む。だが、新しいアイデアをいかにして実現するのか、そのアプローチが成否を分ける。残念なことに、一部のリーダーは抵抗に直面するとフラストレーションを抱いて熱意を失い、組織を去ることさえある。
調査によると、これは特に「変化の触媒」になるために採用されたリーダーに当てはまる。リーダーシップの訓練と調査を手掛ける企業、リーダーシップIQの調査によると、新規雇用されたエグゼクティブの46%が1年半以内に挫折するという。
キャシーは、周囲から孤立せずに自分の考えを推進できるような変革のアプローチが欠けていると気づき、メンタルモデルを「クルセーダー型」から「協調型」のリーダーへと移行する必要があった。
クルセーダー型アプローチ:情熱的だが孤立を招く
「クルセーダー」とは、クリス・クエンネとジョン・ダナーの共著、Built for Growth(未訳)で取り上げられたリーダーシップのスタイルである。クルセーダー型リーダーは、自分のビジョンや価値観を持ち、目標を情熱的に推し進める。こうしたリーダーが下す判断は、一連の中核的信念と価値観に導かれている。変化に直接的かつ強硬的に取り組み、強い目的意識に駆り立てられ、反対に直面しても、ますます熱意に燃えて意見を主張する。
クルセーダー型アプローチを取るリーダーは、自分の考えが短期的にプラスの影響をもたらすのを見て、初期の段階で自信と自己効力感を得る。だが、長期的にはこのアプローチは往々にして逆効果になる。クルセーダー型のリーダーは、ほかの考えを受け入れず、柔軟性に乏しく、熱意が過剰と見なされがちである。情熱は好ましい特徴になりうるが、よくありがちなネガティブな行動を伴うと、有害な特徴になる。
クルセーダー型のリーダーには、次のような傾向がある。
・頻繁に、熱烈に持論を主張し、時には会話を支配してしまう。
・人の発言をさえぎる、あるいは自分の視点でしか質問に答えない。つまり、人の話を理解するために聞くことをしない。
・ずけずけと意見を言い、ほかの視点を考慮しないまま、自分の関心事案を推し進めようとする。
・抵抗に直面すると、目に見えていら立つことが多く、自分のやり方をますます正当化したり擁護したりする。相手が反対しているのは、純粋な見解の相違ではなく相手の無知ゆえであると思い込みがちである。
あなたはクルセーダー型リーダーか
自分のリーダーシップのスタイルを振り返ってみると、いくつかクルセーダー型の特徴に気づくかもしれない。クルセーダー型のアプローチを取るようになる理由は一つではなく、さまざまな要因があり、それぞれに結果が伴う。
よりバランスの取れたリーダーシップのスタイルを取るために、自分を見つめ直し、自分のリーダーシップの根本にある原因と影響を理解することが大切である。以下は、クルセーダー型のアプローチの主な指標である。
情熱的である
ある問題について情熱的なリーダーは、柔軟性がなく自己防衛的と誤解されるような行動をすることがある。たいてい、ある領域にかなりの専門知識を持っている。前進するには自分のやり方が最善だと強く信じているので、ほかの視点を受け入れたり考慮したりしにくい。研究によれば、情熱を最優先すると効果がないばかりか、害になることさえあり、疲弊を招く。
遅々とした変化にいら立つ
クルセーダー型のリーダーは、進展のためには独力で頑張る必要があると考え、厳格で集中的なアプローチを取るため、長期的変化を起こすのに必要な支持者や協力者を巻き込む機会を逸してしまう。リーダーの持つ危機感は、影響を与えたいグループには共有されない。
過去にクルセーダー型のアプローチで成功したことがある
過去にクルセーダー型のアプローチによって即座に結果を出したことがあるため、その方法に戻ってしまうリーダーもいる。かつてこのアプローチで反対意見を圧倒し、決定を下し、素晴らしい成果を達成した。ただし、それは短期的な成果であった。長期的には、こうした戦術は裏目に出ることがあり、長期的変化を実現する能力を損なってしまう。