最適なアプローチに従う

 従業員が業績不振の言いわけをする2つ目の大きな原因は、求められていることを実行するだけのスキルや知識がないことだ。もしマネジャーの不安が、従業員の能力不足と関係しているなら、達成すべきことだけでなく、それを達成する方法を探ることをプロセスに組み込もう。具体的な懸念事項を取り上げながら、この問題を話し合う方法がいくつかある。

 その人が近道をしたり、必要不可欠な要素をおろそかにしたりする可能性があると思われる場合は、必要なステップを詳しく説明する。効果的なアプローチを共有し、過去のプロジェクトの前例を示す。しかし、一方的に話すのは避けたい。相手が頷いているからといって、理解していることにはならない。計画を共有してもらい、依頼した仕事を相手がどのように処理しているかを把握する。

 そして、「財務部門が賛同していることを確認するために、どのようなステップを踏むのですか」など、相手の注意を喚起するような質問をして、必要な軌道修正を行う。これらを明らかにすることで、プロジェクトに取り組む方法を知らなかったという従業員の言いわけを排除することができる。

 マネジャーの懸念が、従業員の技術的なスキルではなく、人間的なスキルにある可能性もある。

 従業員がステークホルダーとの関係を台無しにするのではないかと心配しているなら、対人関係の問題を技術的な問題と同じように重要視しなければならない。主要なステークホルダー、プロジェクトにおける相互の利害関係、そして考えられる特異性を一緒に明らかにしよう。誰が決定に影響を与えるのか。ステークホルダーは何を求め、何に影響を受けるのか。そして、意思決定者や影響力のある人たち以外にも、考慮すべき貴重な視点を持つ人たちについて考えるよう促そう。これらを明らかにすることで、十分なサポートが得られなかったとか、パートナーがやっかいだったというような言いわけを排除できる。

 従業員が下す意思決定を想定し、その判断基準を事前に確認することで、能力のギャップを軽減することも可能だ。そうすれば、あなたがよいと思っている決断を従業員も下すであろうと、より強く確信できる。意思決定やトレードオフを評価する基準について尋ねるなど、さまざまな方法でこの問題について切り出すこともできる。完璧な選択肢がない場合、どうやって評価基準に優先順位をつけるのか。また、すべてを手に入れようとして行き詰まらないように、決断したことの実行方法をどの基準で決めるべきかを明確にすると効果的だ。ただし、どの決断を下すべきかを指示してはいけない。

 プロセスについて合意すれば、能力についての言いわけの多くを排除することができる。

緊張を高める

 ここまで、認識と能力の問題について述べてきた。失敗を招きがちな3つ目のポイントは、仕事をやり遂げるモチベーションが欠けていることだ。もし信頼できなくなった原因が従業員のやる気の有無にあるのなら、成すべきことが何かを強調し、成果を出せなかった場合に何が問題になるかを明確にしよう。

 ちょっとしたインセンティブが必要なら、アメとムチの両方の選択肢がある。アメを使う場合は、仕事に成功した場合に、従業員の評判や将来の機会への影響など、さまざまなプラスの結果にどうつながるかを示すとよい。一方、ムチを使う場合は、結果を出さなかった場合のマイナスの影響を示す。可能であれば、これらの外発的な結果だけでなく、その人がこの種の仕事の何に喜びを感じていて、うまくできた時にどのような報酬が得られるのかを話し、内発的な報酬も加える。

 もう一つ、モチベーション問題として、勢いよく始めたものの、問題が起きそうだと感じたとたんに諦めてしまうケースがある。その場合、マネジャーは従業員とともにプランBを準備するプロセスを進行することが必要だ。挫折に対する予防措置を取るのである。

 うまくいかないことを予測し、時間をかけて戦略を立てておく。どのような問題が発生すると予想されるか。それらの問題にどう対処するか。どのような状況になったらマネジャーである自分に問題を報告すべきであり、どのような状況であれば自分自身で対処してもらいたいと思っているのかを明らかにしよう。不測の事態や潜在的な落とし穴について考えることで、忍耐強くやり遂げることを従業員に期待していると示すことができる。

 結果を明確にすれば、モチベーションを高めることができる。

 あなたを失望させ続け、自分のせいではないと言いわけをする従業員をマネジメントしているなら、その人が奇跡的に信頼できる人になるなどと期待することにエネルギーを無駄遣いしてはならない。そういった従業員でも成功できるような、そしてその過程で言いわけを排除するようなプロセスを構築しよう。

 それでもその従業員が成果を出さず、「でも」を連発して言いわけしている場合は、パフォーマンス管理の評価に必要な材料はすべて手元に揃っているため、それらを活用すればよい。


"How to Manage an Employee Who Always Makes Excuses," HBR.org, July 17, 2023.