攻めと守りを同時に行う「戦略としてのコスト管理」
サマリー:『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2023年10月号の特集は「戦略としてのコスト管理」です。景気後退への懸念が拭えない中、多くのリーダーがコスト削減の圧力に直面しています。とはいえ一律カットが正解な... もっと見るのでしょうか。最新の論文を通じて、コスト管理のあり方について考察します。 閉じる

コスト削減と人材投資を両立させる

 景気後退への懸念が拭えない中、多くのリーダーがコスト削減の圧力に直面しています。ですが、いま本当に事業投資や人材投資を抑制すべき時なのでしょうか。今号の特集「戦略としてのコスト管理」において考察します。

 特集1本目は、ハーバード・ビジネス・スクール教授のランジェイ・グラティによる「経営の効率化と未来志向の投資を両立させる法」です。逆境にあるリーダーは、予算・人員の削減や新規投資の凍結を選択する傾向があります。ですが、真のリーダーは、守りを固めると同時に攻めにも打って出ます。そのマインドセットについて語ります。

 特集2本目は、Strategy&のコンサルタントらによる「成長戦略としてのコスト削減」と題した実践的な論考です。筆者らは1500社の調査を通じて「近視眼的なコスト削減は組織の弱体化を招く」と結論づけました。成長に導く「コスト・トランスフォーメーション」を実現するための5つのステップを述べます。

 特集3本目はマッキンゼー・アンド・カンパニーの筆者らによる「中間管理職の人員削減を軽々しく行うべきではない」です。コスト削減の標的になりやすい中間管理職層こそが、組織において最も価値ある存在になりうると言います。安易に切り捨てるのではなく投資による成長を促すべきです。

 特集4本目は、官民ファンドINCJ会長兼CEOの志賀俊之氏へのインタビュー「日本企業の再建には、組織のしがらみを断ち切ることが欠かせない」です。かつて日産自動車を再建した立役者に、コスト管理の本質や人材投資の要諦について伺います。まずやるべきは「しがらみ」を断ち切ることです。

 特集全体からわかるのは、コスト削減を一律目標として指示すると将来の成長が阻害されるということです。厳しい局面においても、守りのコスト削減と攻めの人材投資を同時に行うような戦略的な思考が欠かせません。ぜひご一読ください。

 なお、今号のテーマについて語るイベントも開催いたします。ご興味のある方は気軽にご参加ください。

(編集長 小島健志)