たとえば、データスペシャリストがルーチンワークを淡々とこなしている日に、新しいイニシアティブを提案するようなプレッシャーの強い会議に参加すると、活力が湧いてくるかもしれない。反対に、強いプレッシャーを感じるリポートと格闘している日に、会社のITシステムに関するプレッシャーの弱い進捗確認の会議に参加すると、エネルギーを休めるために必要な時間になる。こうした補完効果は、知識労働者がその日にやらなければならないことにエネルギーを使い果たす前、特に午後よりも午前中に最も顕著に表れることもわかった。
これらの研究結果は、テイラーとミンリのスケジューリングのアプローチが彼らの仕事に対するエネルギーを意図せず損なうかもしれないことを浮き彫りにするとともに、改善しうる道筋も明らかにしている。
テイラーは一日に会議を詰め込んだために、その日の会議と個人のタスクの時間のバランスが大きく崩れ、エネルギー補給に欠かせない小休憩の時間が減る可能性が高い。スケジュールの最適化を目指しているにもかかわらず、このやり方ではかえってエネルギーが枯渇し、パフォーマンスが低下しかねない。会議と個人のタスクを2日間にバランスよく分散すれば、エネルギーと効率が高まるかもしれない。
ミンリは火曜日に難しいプロジェクトと重要な会議との両方に取り組むという予定を立てたが、過剰なプレッシャーのせいで休憩と回復の機会が足りなくなる可能性がある。反対に水曜日は、プレッシャーの少ない会議と簡単なプロジェクトだけで刺激が足りないかもしれない。そこで、一日に要求の厳しい個人のタスクとあまり厳しくない会議をこなし、もう一日は反対の組み合わせにすると、2日間を通してエネルギーを維持できる可能性が高くなる。
仕事のスケジューリングにおいて、特に個人のタスクと会議を並行させるという課題に直面した時は次の点を考えてみよう。
会議に費やす時間の合計だけでなく、一日の中で会議と個人のタスクに費やす時間の相対的な割合に注目する
会議と個人のタスクの適度なバランスを保つと、一日を通して必要な休憩やエネルギー補給が可能になる。このアプローチでは、たとえ時間の節約になると思えても、一日に多くの会議を入れて過剰な負荷をかけないことが重要だ。個人のタスクと会議の相対的な時間の割合を一日単位でマネジメントすることにより、仕事へのエネルギーレベルを高め、パフォーマンス、創造性、仕事の満足度の向上に貢献できる。
会議と個人のタスクが補完し合うように一日の仕事を設計する
プレッシャーの強い会議とプレッシャーの低い個人のタスク、あるいは反対の組み合わせがもたらす恩恵を理解する。プレッシャーのレベルが同じ活動を一つの時間帯にまとめるのではなく、難易度の高いタスクや会議を異なる日や時間帯に分散させる。このアプローチはプレッシャーのレベルの適切な補完性を育み、それによって仕事のエネルギーが高まって、よりよいパフォーマンスを発揮しやすくなる。
一日のスケジューリングに全体的なアプローチを採用する
会議や個人のタスクを都合よくカレンダーに入れ込むのではなく、一日の構成にもたらす広範な意味合いを考慮する。スケジューリングの判断が一日の時間配分をどのように変えて、あなたのエネルギーと生産性にどのような影響を与えるかに留意する。
こうしたスケジューリングを考える際は次のような視点が役に立つだろう。
・このスケジューリングは、この日の会議と個人のタスクの時間のバランスにどのような影響を与えるか。
・この日のこの時間帯にこの会議を追加すると、個人の作業時間が圧縮されすぎて、必要な休憩やエネルギーの補給が犠牲にならないか。
・このスケジュールを組むと、一日のうちにプレッシャーの強い会議や仕事が連続して発生することにならないか。それを避けるにはどうすればよいか。
・プレッシャーの強い仕事と低い仕事を、一日を通してより効果的に組み合わせるために、この会議やタスクに適した時間帯はないか。
知識労働者にとって会議を管理することは、有効性や時間効率を高めるというだけではない。日々のスケジューリングに対する戦略的アプローチが必要なのだ。つまり、時間の配分と自分にかけるプレッシャーの大きさを考慮しながら、日常的な会議と個人のタスクを両立させなければならない。
これらの要素に留意すれば、スケジューリングの落とし穴を回避して、エネルギーと生産性の予期せぬ消耗を防ぐことができる。会議のスケジューリングに全体的なアプローチを取り入れることによって、仕事への取り組み方が変わり、日々の責任をよりバランスよく、実りあるものにできるかもしれない。
"Arrange Your Meeting Schedule to Boost Your Energy," HBR.org, August 29, 2023.