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霧の中を全力疾走するリーダーの疲弊に気づいているか
先日、筆者らが仕事をしている世界的テクノロジー企業のシニアマネジャーが会議中に突然、泣き出した。彼女は数カ月間、目の前の「火消し」に追われ、次々に更新されるAIツールに対応し、毎週のように新しいツールが登場するたびにロードマップを書き直していた。
会議の日の朝はCFOと電話で打ち合わせをして、組織再編により彼女のチームメンバーのポストは多くが削減されると念を押されていた。その直後、ある部下に言われた──「半年後、私の仕事はありますか」。彼女がリーダーシップ会議に参加した頃には、答えを持っている振りを続けてきた重圧が限界を超え、感情があふれ出たのだった。
この場面は大きな現実を映し出している。戦略は、かつては晴れた日にマラソンを走るようなものだった。しかしいまは、霧の中で、足元が動いているのにもかかわらず全力疾走するような感覚だ。あらゆる分野のリーダーは、事態がますます制御不能に感じられるという現実に直面している。
こうした蔓延する不安と不確実性の感覚を生み出しているのは、3つの衝突する力だ。本稿では、それらの力について、そして不安がリーダーシップに与える影響、さらにはその対応策を論じていく。
リーダーの不安を駆り立てる3つの要因
今日の不安を駆り立てる力は既知のものだが、変化の量とペースが激しいため、それらを乗り切るためのルールはリアルタイムで書き換えられている。たとえば次のような影響がある。
政策の変動性
リーダーはいままさに、変動する関税制度、突然の規制変更、政治家と公に対立するリスク、H-1Bビザ(高度な専門技能を持つ外国人向け就労ビザ)や移民規則の変遷、突発的な禁輸措置を切り抜けなければならない。こうした衝撃は、ほとんど予告なく訪れる。ソーシャルメディアで発表された政策が採用計画を一夜にして変える。新たな関税がサプライチェーンや製品のロードマップを混乱させる。たった一つの投稿が数時間で株価を急騰させ急落させる。これらは、もはや稀な出来事ではない。混乱が日常のリズムになっている。常に辺りを漂う変動性が、人材、業務、資本に関する意思決定を毎週のように組み替えている。
AIが浸透した世界
AIはあらゆる業務フロー、あらゆる製品、あらゆる意思決定に浸透しつつある。AIが提起する問いは実存的でさえある。機械が思考を担う時、「仕事」とはそもそも何を意味するのか。どの機能を再設計し、拡張し、あるいは置き換えるべきか。多くの労働者にとって、能力を拡張されることと置き換えられることの境界線は、かつてないほど曖昧に感じられる。
地政学的な分断
世界の地図は断片化している。単一で統合されたかつてのシステムは、対立するブロックや地域ハブへと分裂しつつある。貿易障壁や制裁が増えて、資本、重要なハードウェア、データ、人材の移動は、より多くの制約に直面している。異なるルールとリスクを抱える地域をまたいで、企業はどのように立ち位置を見定めるべきだろうか。
不安がリーダーシップを歪める仕組み
不安は、行動を変える前に脳を変える。制御されない不安は、人をマヒさせるだけでなく、優先順位を組み替える。神経科学の研究によれば、急性ストレスは脳のリソースを脅威の検出に振り向けて、知覚を狭め、創造的な能力を消耗させる。機会を探る代わりに、心は脅威に固定される。








