-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
フォロワーシップの重要性を過小評価していないか
現代における最高のリーダーの資質で過小評価されているものの一つは、素晴らしいフォロワーとしてのスキルだろう。マイクロソフトCEOのサティア・ナデラは、トップダウンで指示を行うのではなく、エンジニアや顧客、批判者の声に深く耳を傾けることでマイクロソフトを立て直した。
ゼネラル・モーターズ(GM)のトップを10年以上務めるメアリー・バーラは、極めて技術的な判断は製造チームや安全担当エンジニアに委ねることで知られる。アップルCEOのティム・クックは、就任前、データやプロセス、そして専門家の意見に、宗教的といってよいほど自制心を持って従う、静かな共感力を持つ副官だった。その資質が、アップルを歴史的な市場価値を誇る企業へと成長させる原動力となった。
世界の変化するスピードと複雑性が加速する中、リーダーが耳を傾けて学ぶ必要性は非常に大きい。ところが、優れたリーダーシップとはどういうものかについて、間違った思い込み(他者に指令を出したり鼓舞したりすることに優れている)がある。そのために、現代の組織で優れたリーダーシップを実践したり、育成したりできなくなっている。本稿で探っていくように、この問題は克服できる。組織は、傑出したリーダーに欠かせないフォロワーシップを育てることができるのだ。
フォロワーシップ:リーダーシップに欠けている半分の要素
リーダーシップに関する議論は多岐にわたるが、そこではリーダーシップが英雄的な行為として描かれる傾向がある。歴史上の偉大なリーダーは、統率の技を極めた者だと、私たちは聞かされてきた。リーダーは、先見の明のある一匹狼であり、カリスマ的な破壊者、あるいは、よりよい未来を魔法のように生み出す高潔な変革の担い手と描かれる。そして、フォロワーは依然として、もっぱらリーダーシップに受動的に従う者とされがちだ。
だが実際には、リーダーシップとフォロワーシップは、固定的な一方通行の序列ではなく、共同で構築される流動的で交代可能なプロセスだ。リーダーシップをこのように理解すると、よいリーダーになるとは、権威を巧みに振りかざすことではなく、パワーのある立場でもうまく従う能力を習得することだとわかる。
有効なフォロワーシップは、本質的に、自分よりも大きな何かのために学び、耳を傾け、協働し、挑戦し、調整する能力を必要とする。個人の集まりが、単独では成し遂げられないことをするために、利己的または個人主義的なアジェンダを脇に置き、集団になると、素晴らしい結果を出せるようになる。多くの研究者が、リーダーシップとは、集団を説得して、高い成績を挙げるチームにする能力だと定義するのは偶然ではない。
それを妨げるもの
残念ながら、ほとんどのリーダーは、フォロワーシップのスキルを身につけるのに苦労する。まず、研究によると、多くのリーダーは賢く見えることや、効果的な傾聴や学習に取り組む能力を示すことに注力しすぎている。ソクラテスが言ったと伝えられているように、「賢人はすべてのことと、すべての人から学ぶ。凡人は経験から学ぶ。愚者はすべての答えを決めつけている」。だから愚かな人は、知的に成長できず、ひどければ、自分の答えが間違っていることに気がつかない。
リーダーが失敗するのは、統率能力がないからであることはめったにない。結局のところ、人は、命令する権限がある人の指令に(たとえ気に入らなくても)従うものだ。反乱はめったに起こらない。リーダーが失敗するのは、リーダーシップの根本的なスキルとは、自分に従いたいと他者に思わせることであり、そのためにはリーダーが優れたフォロワーの模範を示さなければならないという事実を受け入れられないからだ。優れたフォロワーの行動とは、謙虚さや好奇心があり、フィードバックや異論を受け入れる受容性と、自分のエゴではなくパーパスへの忠実性を示すことだ。
なぜフォロワーシップのスキルがこれまでになく重要になっているのか
現代の世界は、自分はすべての答えを持っていると信じているか、信じているように振る舞わなければならないと感じるリーダーに厳しい処遇を用意している。専門知識は複雑で広範にわたっているため、たった一人では(CEOでさえも)、全体的な状況を完全に理解することはできない。さらに、AIの高性能化により、伝統的な専門知識は排他的でなくなっている。AIのおかげで、初心者でも専門家レベルの仕事ができるようになったのだ。
これらは、リーダーが感情的知性(EI)をさらに学ばなければならないことを意味する。つまりリーダーは、本物のつながりを築き、他者の気持ちを理解する能力が必要だ。また、人をまとめ上げ、アイデアをつなぎ、たえず学び、多様な視点を融合させなければならない。一歩引くべきタイミングや、他者を応援すべき時、他人の専門知識に頼るべき時を理解する必要がある。
現代において、最も成果を挙げるリーダーが、過去に卓越したフォロワーだったのはそのためだ。彼らは実際に組織がどのように機能していて、人々が成功するために何が必要で、権威ではなく貢献によって信頼を築くにはどうすればよいかを学んでいる。複数のメタ分析でも、人間をよいフォロワーまたは有能なフォロワーにする人格や行動は、よいリーダーや能力のあるリーダーの人格や行動とほぼ同じであることが示されている。
したがって、高いレベルの感情の安定や社交性、親切さ、好奇心、労働倫理、高潔性、学習能力は、よりよいフォロワーになると同時に、よりよいリーダーを生み出す傾向がある。よいフォロワーの資質を持つ社外候補者を登用したり、社内候補者を昇進させたりすれば、彼らが有効なリーダーになる可能性は高い。
以下では、組織が外部から登用するリーダーに求めるべき、またリーダーシップ育成プログラムに組み込むべき5つの中核的なフォロワーの能力を紹介しよう。
1. 積極的な傾聴
優れたフォロワーは、確認するためではなく、理解するために相手の言葉に耳を傾ける。また、エゴや恐怖や序列のフィルターをかけずに情報を受け入れる。新しい情報が自分の思い込みやアイデアと一致しなくても、自己防衛に走ることはない。つまり彼らの関心は、自我同調的に解釈することではなく、現実を理解することにある。
このスタンスを取るリーダーは、自分の組織の内外で起きていることから自分を切り離すという、リーダーシップの最大のリスクを回避できる。相手に真に耳を傾けると、見落としを減らし、小さなサインを早期に察知し、自分の周囲に心理的安全性を構築できる。ただ、傾聴は簡単に身につけられるスキルではない。なぜならそれには、謙虚さや忍耐、そして間違っていることを受け入れる意欲が必要だからだ。まさにリーダーがフォロワーに求める行動だ。
2. 個人の手柄ではなくパーパスを重視する
最も価値あるフォロワーは、誰が称賛されるかよりも、チームや組織にとって何が最善かを気にかける。人の功績を自分の手柄にしたり、自分のミスなのに他者を非難するなど、手柄や非難を自分に有利に利用しない。リーダーシップとは本質的的に、自己利益を超えてより大きな集団のために行動するよう他者を説得することだから、マネジャーはそのようなフォロワーを見習うべきだ。自分自身よりも大きな何か、つまりその実現には他者が必要になることに意識を集中すべきだ。
このようなフォロワーを見習うリーダーは、個人の芝居がかった行動、つまり実際に働いているのではなく「働いている振り」をしたり、具体的な「アウトプット」を生み出すのではなく自分の「インプット」を宣伝したりといった、仕事における「パフォーマンス的」な側面ではなく、集団的パフォーマンスを重視する文化をつくる傾向がある。エゴを二の次にすると、チームは自由にコラボレーションを図るようになり、メンバーは自分よりも大きなものの一部と感じられるようになる。
3. 信頼性の高い実行
フォロワーは物事を実現する。レベルの高い計画を結果に、アイデアを具体的な現実に変える。この能力を持つリーダーは地に足がついている。何が実現可能で、仕事がどのように成し遂げられ、チームがどのような制約に直面するかを理解している。筆者らが最近論じてきたように、これは新人レベルの仕事をAIから守るべき説得力のある理由になる。すなわち、若手が物事の進め方を直接学び、強力なリーダーになるのに必要なフォロワーシップのスキルを身につけられるようにするのだ。
リーダーが、計画やアイデアを実現するには何が必要かを知らないと、実行不可能な戦略が生まれたり、証拠ではなく楽観論が支配したりする事態になりかねない。すると、エグゼクティブが従業員から切り離され、企業文化や組織を誤解する悲劇的な事態に陥るおそれがある。
4. 重要な反対意見
有能なフォロワーは、建設的な異論を唱える。質問し、リスクを指摘し、何かがおかしい時は声を上げることで、組織について貴重なインサイトや情報をもたらし、状況の改善を助ける。反対意見を罰するのではなく歓迎するリーダーは、一方的な権威が陥りがちな落とし穴(集団思考や非現実的な自信や避けられる失敗)を回避する。
リーダーが異論に対してオープンであることは、その組織の競争優位となる。なぜならそれは、組織の知性をそれ以上に広げられるからだ。したがって、優れたフォロワーと同じように、有能なリーダーは必要に応じてフォロワーとなり、必要な時は質問する。不公平や非効率、不正義、あるいは問題が悪化する前に、声を上げてそれを暴く。実際、リーダーであれフォロワーであれ、衝突を避けたがる人は、長い目で見ると多くの対立を生み出す。
5. コーチングを受ける能力
フォロワーは常に学んでいる。フィードバックを求め、それに対して自己防衛に走ることはない。そして改善を自分のアイデンティティの一部にする。本稿共著者の一人(チャモロ=プレミュジック)が近著で示しているように、コーチングを受ける能力のあるフォロワーは、自分を誇張することなく、過去や現在の自分に縛られることもない。そうではなく、より広く、新しく、拡張され、柔軟な自分を創造あるいはキュレートすることを学ぶ。
すると、まったく新しい問題も切り抜けることができる。時代遅れになることなく、世界とともに進化できる。コーチングを受ける能力は、現在のポジションに伴うパワーがもたらす慢心を防ぐ手段になる。またこれは、リーダーが自己批判的で、好奇心があり、チームとつながることを可能にするとともに、自分をつくり直して、自分の未来を再構築して新たな挑戦に立ち向かい、同僚よりも優れた成果を上げることにつながる。
* * *
要するに、最高のリーダーは、英雄的な司令官ではなく、模範的なフォロワーだ。深く耳を傾け、絶え間なく学び、広くコラボレーションを図り、勇気を持って問いかけ、適応を続ける。そして、非常に上手に従うからこそ、そのようなリーダーについていこうと周囲は思うのだ。
"The Best Leaders Are Great Followers," HBR.org, January 14, 2026.







