上司や同僚を味方に変えるシニアリーダーは、何をしているのか
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サマリー:根拠のある提案であっても、同僚や上司からの支持が自動的に得られるとは限らない。シニアリーダーとして周囲を動かすには、自身の能力への疑念を捨て、ステークホルダーの関心や動機を深く理解した戦略的な働きかけが不可欠である。周囲を巻き込み、組織的な勢いを生み出す力が求められる。本稿では、自己評価の修正から状況のマッピング、協力体制を構築する具体策まで、周囲を味方につけるための要諦を紹介する。

シニアリーダーの行動を促すには

 あなたには、次の四半期に売上げを伸ばすアイデアがある。きちんとした根拠があり、リサーチもしてある。だが、同僚は乗り気ではない。上司も関心を示さない。このような時、必ずしもあなたに問題があるわけではない。支持を得るためには、強力なアイデア以上のものが必要だ。では、どうすれば支持を増やせるのか。どうすれば他のシニアリーダーの行動を促せるのか。そして、反対意見が出たらどう対処すべきなのか。

専門家の意見

 シニアリーダーの世界には、奇妙なパラドックスがある。さまざまな経験を積み、信頼を構築してきた結果、ようやく何が必要かわかるようになったのに、それを支持するように人を動かせるとは限らない。問題の一因は自信のなさかもしれないと、コーネル大学教授で、組織行動学を担当するバネッサ・ボーンズは言う。「経営幹部クラスの非常に成功した人でさえ、自分の影響力は同僚よりも小さいと感じている」

 さらに、多くのエグゼクティブは、自分が駆け出しだった頃と同じ方法で仕事をしていると、南カリフォルニア大学マーシャルスクール・オブ・ビジネス教授で、経営学と組織学を担当するエリック・アニシッチは指摘する。昔は、有能なら注目を集めることができた。「だがシニアレベルになると、あなたが賢いかどうか誰も問題にしない」と彼は言う。賢いに決まっているからだ。したがって、同僚が自分のアイデアに乗ってくれるようにするには、彼らが何を大切にしていて、何が彼らの意思決定を動かしているかを理解する必要がある。それには、自分の主張の正しさだけでなく、「人間関係やグループ、価値交換などを通じて説得する必要がある」と彼は言う。では、専門家の助言を紹介しよう。

自分を過小評価するのをやめる

 シニアリーダーは、自分の影響力を疑問に思うことが多い。だが、ボーンズの研究は、人は他者がどれだけ自分に注目し、自分の要請に「イエス」と答える意欲があるかを慢性的に過小評価していることを示している。「インポスター症候群である」とボーンズは指摘する。つまり、自分の能力を非合理的に疑う傾向のことだ。あなたは昇進する中で、高成績を上げる人たちと自分を常に比較している。この比較が自己疑念を生み、自分が必要としているものを要請することを躊躇させる。「私たちは、相手が『イエス』と言ってくれる確信がなければ、物事を頼まないものだ」と彼女は言う。「だがそれは、必要以上に慎重になって、実際よりも大きな抵抗にあうと思い込んでいるだけだ」。つまり、周囲の抵抗よりも、あなた自身の躊躇が大きな壁になることは少なくない。だが、あなたには自分で思っている以上の影響力がある。

状況をマッピングする

 あなたは現時点で、組織全体で大きな認知度を持つ。だが、同僚のことについては見落としがちだと、ボーンズは指摘する。直属の部下が相手なら、アイデアを発表する前に慎重に様子を探るのに、同僚が相手となると、自分と同じように考えているだろうと思い込む。自分と似たようなポジションや経歴を持つから、もちろん自分と同じ考え方をすると思うのだ。

 さらにあなたは、自分が思っている以上に現場から切り離されていると、アニシッチは言う。「オペレーションと関わりがなくなり、周囲はあなたが喜ぶことを聞かせようとする」。この組み合わせは危険だ。同僚が大切にしていることを見落とし、人間関係を当然のものと思うようになる。「他人の見解や、人間関係の確かさについての思い込みを捨てるべきだ」と彼は言う。それよりも、現在の状況をマッピングしよう。人と話して情報を集めよう。優先順位や競合する圧力や、懸念に耳を傾けよう。具体的な提案をする前にこの「偵察」を行い、「連合に引き込めそうなアライ(味方)」を見つけるのだ。

難点を明らかにする

 次に、一対一の会話で自分のアイデアを共有する。具体的な質問や反対意見を聞き出すのだ。「他者の懸念を理解する最もよい方法は、推測するのではなく、直接尋ねることだ」とボーンズは言う。「自分の頭の中のエコーチェンバーから抜け出すと、推測ではなく、周囲の人たちが実際に考えていることが理解できるようになる」。予算や自主性、人員数、そして組織内での立場など、あなたの提案が周囲にもたらす負担に特に注意を払うこと。「それが自分たちにどのような影響を与えるかについて、皆、強い意見がある」とアニシッチは言う。ここで目指すべきは、あらゆる摩擦を避けることではなく、摩擦を理解して、対策を講じられるようにすることだ。「事前に恐怖感を最小限に抑えて、潜在的なメリットを膨らませておくと、受け入れられやすくなる」

そして一緒に問題を乗り越える

 すべての問いに答えを持っていなくてもよい。完璧な計画を提示しようとすると裏目に出るものだと、アニシッチは言う。それよりも、周囲を問題解決に巻き込むのだ。「これを君の担当地域で成功させるにはどうすればよいだろう」とか「どうすれば意図せぬ結果を最小限に抑えられるだろう」と聞いてみよう。同僚たちに解決策づくりを手伝ってもらうと、結果に対する当事者意識が生まれると、アニシッチは語る(のちほど詳述する)。

協力体制を構築する

 自分の提案を磨いたら、戦略的にサポートを構築しよう。アニシッチは、まずは当然味方になってくれる人たちから支持を固めることを勧める。すなわち、あなたの提案から最も恩恵を受ける人たちや、あなたと優先順位が重なる人たちだ。サポートを頼む準備ができたら、なるべく対面で頼もう。ボーンズの研究によると、対面でのリクエストは、相手に「はい」と言わせるのに極めて効果的だ。「直接会って話せないなら、せめて電話をしよう。メールよりずっとよい」と彼女は言う。「あなたの声を聞かせるのだ」

 自分が必要としていることを明確に伝えること。あなたは、彼らのチームやネットワークにあなたのアイデアを売り込んでほしいのだ。目的は、勢いをつくり、アニシッチが言うところの「サラウンド音響」をつくり出すことだ。最終的な意思決定者(CEOなど最終承認権を持つ人)が、CFOや営業トップ、社外顧問など信頼できる複数の情報源から同じメッセージを聞くようになると、「あなたのアイデアの正しさが浮き彫りになり、不可避的に感じられるようになる」