「改善」とは何か?
それでは、改めて「改善」とはどのようなものをか考えてみましょう。先ほど、「改善」も「イノベーション」も問題解決という点では構造的に何も変わらないという点を指摘しましたが、生産マネジメントの分野では、問題解決行動を「管理」と「改善」に分けて把握しています。
まず、「管理」とは、「目標・標準を固定し、その回りに許容範囲(管理限界)を設定して、これを逸脱した場合には原因を分析し、原因を除去する矯正的行動」です。この定義によれば、最初に設定した目標・標準を逸脱したケースのみが問題であって、「管理」とは、このような問題が発生した際に矯正的行動をとること、つまり現状のやり方を抜本的に変えるのではなく、どちらかと言えば運用方法を巧みにして、目の前の問題を解決しようとする現状維持的な行動です。
したがって、日常生活でも何か仕事を行う際に問題が発生すると、「気をつけてやる」とか、「やった結果を再度確認して、ダメならやり直す」などといった行為を行っていますが、これらの行為は大枠ではすべて「管理」に含まれます。ただ、「管理」という問題解決行動は、どちらかと言えば「管理する人」と「管理される人」という形で階層が分かれることが前提となっており、そのため「管理する人」が「管理される人」に対して、一方的に矯正的行動を取るというケースが一般的です。
これに対して、「改善」の定義は実にシンプルです。「改善」とは、「目標の上方修正あるいは標準の改定を行う行動」です。「管理」との違いを敢えて強調して言えば、「管理」が現状のやり方を抜本的に変えるのではなく、運用方法を巧みにして、問題を解決しようとする現状維持的な行動なのに対して、「改善」は、現状の仕事のやり方を抜本的に変更することで、目標の上方修正あるいは標準の改定を行う現状打破的な行動です。
しかも、「改善」は、「管理」とは異なって、一般に「改善する人」「改善される人」という形で階層が分かれることが必ずしも前提にはなっていません。少なくとも日本企業の場合には、「改善」の基本は、自分たちの仕事を自分たちで「改善」することにあるので、組織の階層間で、無用な軋轢・抵抗を生み出しにくいという特性もあります。