①経営層と現場との間の結節点

 第1の役割は、経営層と現場との間の結節点としての役割です。実際、ミドル・マネジャーは、一方では経営管理の末端機構の担い手であり、他方では現場従業員の利害代弁者、オピニオン・リーダーであるという2重の役割を果たしています。

 そして、ミドル・マネジャーが果たすこの結節点としての役割は、改善活動における経営側の強制を、現場従業員の統制力におきかえ、改善活動の公式的理念を従業員の感覚や職場の規範に適合するよう読み替え、もしくは翻訳する機能です。例えば、トップから指示された改善活動の目的が「人減らしのための運動」ではないかという従業員の疑念に対して、「楽でやりやすい作業に改善する運動」という形に目的を読み替えることで、現場に対して説得するなどの事例が挙げられます。

 経営層と現場との間の結節点としての役割は、仕事の負荷軽減、知的欲求・達成感の充足、職務裁量権の拡大を通じた自主性の発揮という3つのメリットの強化に結び付きます。ミドル・マネジャーが結節点となって、経営側が示した改善活動の目的や理念を読み替えることで、自分たちが担当する仕事が楽になったり、仕事がやりやすくなるなどの改善を実施することが可能になったり、自分たちがやってみたいと考える挑戦的な課題に取り組むことが可能になります。また、改善活動の目的や理念を読み替えることで、改善に対する裁量権を拡大することができ、自らの手で自主的に職場を変えることも可能になります。

 一方、この結節点としての役割は、担当業務の労働密度強化、要員削減を通じて仲間の職場を奪う、作業上の安全・環境面での問題を発生させるという3つのデメリットの抑制に結び付きます。ミドル・マネジャーが結節点となって経営側が示した改善活動の目的や理念を読み替えることで、経営成果は得られたものの自らの担当業務の負荷が増大したり作業がやりにくくなるというデメリットを抑制することができたり、仲間の職場を奪いかねない改善や作業上の安全や環境面で問題が発生しかねない改善を、未然に抑制することができます。

②改善アイデアを引き出す触媒

 第2の役割は、改善アイデアを引き出す触媒としての役割です。ミドル・マネジャーは、部下とのコミュニケーションを通じて、部下の創造性を引き出し、部下から提案されるアイデアを統合することで、チームとして創造性に富んだ改善アイデアを立案していく必要があります。また、ミドル・マネジャーは単にアイデアを統合するだけでなく、時にはミドル・マネジャー自身が改善アイデアを発案することも必要になります。

 改善アイデアを引き出す触媒としての役割は、技術的知識や専門的技能・管理能力の習得、職場の意思疎通の促進という2つのメリットの強化に結び付きます。改善に対する知識・経験ともに豊富なミドル・マネジャーが改善アイデアを引き出す触媒となることで、従来は専門スタッフが担ってきた管理技術や固有技術に関する知識を従業員にうまく伝承することができたり、部下たちとのコミュニケーションを通じて提案されたアイデアを統合する過程で、部下相互の交流が深まり人間関係を改善することが可能になります。