③改善と日常業務とのバランスを取る

 第3の役割は、改善と日常業務とのバランスを取る役割です。組織的な改善を成功させるためには、改善と日常業務との間の緊張関係をうまくマネジメントする必要があります。短期的な業績を実現することを目指して、多数の改善を性急に実施すれば、混乱が生じるのは避けられません。しかし、その一方で、わずかな改善を冗長に実施すれば、組織が惰性に陥ってしまいます。ミドル・マネジャーは、こうした両極端に陥らないように、改善と日常業務とのバランスに注意を払う必要があります。

 改善と日常業務とのバランスを取るという役割は、労働時間の延長、担当業務の労働密度強化、要員削減を通じて仲間の職場を奪うという3つのデメリットの抑制に結び付きます。ミドル・マネジャーが改善と日常業務とのバランスを適切に保つことで、通常業務に加えて改善活動を行う時間を過度に増加させないで労働時間の延長を抑制できたり、また単に短期的な経営成果だけを求めて通常業務の負荷が高くなる改善や、過度に要員を削減することで日常業務に支障を来す可能性のある改善などを実施しないように注意を払うことで、これらのデメリットを抑制することができます。

④成功体験を積ませる教育者

 第4の役割は、改善活動を通じて従業員に成功体験を積ませる教育者としての役割です。山本五十六の名言にある通り、ミドル・マネジャーは、まず実際に改善をやってみせ、わからないことがあれば教え、次に従業員にやらせてみて、最初は失敗することが多くても、じっと我慢して褒め、従業員に小さな成功体験をたくさん積ませることで、現場をモチベートしていく必要があります。

 成功体験を積ませる教育者としての役割は、技術的知識や専門的技能・管理能力の習得、知的欲求・達成感の充足という2つのメリットの強化に結び付きます。改善に対する知識・経験ともに豊富なミドル・マネジャーが自ら改善をやってみせ教えることで、管理技術や固有技術に関する知識を従業員が無理なく習得できたり、従業員自身が創意工夫を要求される小さな成功体験を数多く経験することで、知的欲求・達成感が充足されます。