特にLVMHは、2006年にフランスのアルプス地方で新たなホテルブランド「シュヴァル・ブラン」を開業したことを皮切りに、エジプト、オーマンと規模を拡大。シュヴァル・ブラン名義以外でも、昨年8月にはカリブ海のリゾート地、セント・バーツ島の5つ星ホテルを買収するなど、かなり意欲的にホテル事業に取り組んでいます。

 どうして、ラグジュアリーブランドがプロデュースするホテルはこれほど増えているのでしょうか。そこにはラグジュアリー消費に関する世界的な意識の変化が影響しています。

旅行、ホテル、グルメ……。「体験」が世界のラグジュアリー消費を推進する

 経営コンサルティングファームのボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が今年1月31日に発表したラグジュアリー市場の調査レポートは、ホテルや旅行といった「体験型ラグジュアリー」が非常に大きな市場規模を持つようになった現状を示しています。

 レポートによると、世界のラグジュアリー市場は1兆8000億ドル規模と報告されています。そのうち、ファッションや時計、宝飾品といったラグジュアリー商品は約3900億ドル。それに対して旅行、ホテル、食事などの体験型ラグジュアリーは約1兆ドルと倍以上にも及んでいるのです(ほか、高級車が約4400億ドルを占める)。

 BCGのシニア・パートナー&マネージング・ディレクターの津坂美樹氏は、その背景を次のように分析します。

 「体験型ラグジュアリーのうち、『旅行・ホテル』というカテゴリーだけでも、約4600億ドルもの市場規模があります。この規模からわかるように、体験型ラグジュアリーは世界各国、あらゆる地域でラグジュアリー消費の強力な推進力となっていますが、特に先進国ではその傾向が顕著です。その理由は、生活者がラグジュアリー消費に求める価値観の変化にあります」