成熟した社会において贅沢という価値観に人々が求めるものが、「モノ(商品)」から「コト(体験)」に移り変わっているなか、ラグジュアリーブランドは旅行や芸術、グルメといった「体験型ラグジュアリー」への参入を加速させている。なかでも近年で顕著なのは、ホテル事業への進出だ。その理由とは。
前回はラグジュアリーブランドの店舗展開に変化が起こっている現状を見てきました。旗艦店におけるカフェやレストランの併設に始まり、バーバーやスパといった体験型のサービスを提供することで、ラグジュアリーブランドは単にプロダクトを販売するだけでなく、ブランドに触れることで与えられる体験のデザインにビジネスを拡張しています。
そうした変化の帰結として、近年のラグジュアリーブランドで急速に増えているのは、ホテル事業への参入です。

ヴェルサーチは2000年にオーストラリアのゴールドコーストにホテル「パラッツォ・ヴェルサーチ」を開業。評価も高く、世界初となる「6つ星」を獲得した。
昨年には、ヴェルサーチとリッツ・カールトンのパートナーシップによる5つ星ホテル「パラッツォ・ヴェルサーチ」)のアジア初進出が発表。成長著しい中国のマカオで2017年にオープン予定で、同ブランドのホテルとしてはオーストラリア、ドバイに次ぐ3店舗目となります。
また、中国では創業120年を迎える高級ジュエラーのブルガリもホテルの開業を予定しており、こちらは上海で2015年オープンと発表されています。
ヴェルサーチとブルガリはラグジュアリーブランドのなかでも早い時期からホテル事業を手がけており(ヴェルサーチは2000年、ブルガリは2004年)、後の成功も含め、この分野におけるパイオニアといえるブランドです。
現在はアルマーニ、モスキーノ、ミッソーニ、マルタン・マルジェラなどといった高級ファッションブランドのほか、世界最大の高級ブランドグループLVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)もホテルを展開しています。