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ブルガリが2軒目となるホテルをオープンしたバリは世界的なリゾート地。しかし、あえて断崖絶壁の大自然の中につくることで、「究極のラグジュアリー体験」を際立たせた。(画像/2006 Rio Helmi)

 次いでオープンした2軒目のブルガリ・ホテルは、手法を一変して地球の反対側、インドネシアのバリに進出。ここは断崖絶壁のうえに建つホテルとして有名で、人里から離れた手つかずの自然のなかに豪華なヴィラが並んでいます。東南アジアの大自然を抜けたら、周辺の環境からは想像もできないような高級ホテルが広がっているわけです。

 ブルガリ・ホテルのポリシーは、「絶対にほかでは体験できない空間を提供すること」。その意味は単にホテルが豪華絢爛なだけではなく、驚きの要素も含めて提供することで、ほかのブランドには実現できない体験型ラグジュアリーを作り上げているのです。

体験型ラグジュアリーにはまだまだ伸びしろがある

 ラグジュアリーブランドによる体験型ラグジュアリーへの進出は、ホテル事業にまでたどり着きました。前出のBCGレポートで「旅行・ホテル」がもっとも市場規模の大きいカテゴリーだったように、体験型ラグジュアリーにはまだまだ伸びしろがあると考えられており、今後も続々とブランドの参入が見込まれています。

 しかし、ラグジュアリーブランドによる体験型ラグジュアリーの取り組みは、ホテルで完成したわけではありません。

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LVMHがプロデュースした現代美術館「Louis Vuitton Foundation for Creation」を設計した建築家のフランク・ゲーリー。同社はアート産業への進出で、体験型ラグジュアリーの新たなかたちを探る。(画像/Bloomberg)

 今年1月にはLVMHがパリに建設した現代美術館「Louis Vuitton Foundation for Creation」が完成。世界的建築家のフランク・ゲーリーによる雲をイメージしたデザインが目を引く施設で、展示場やホール、室内庭園などを備えています。

 また、エルメスはホテルではなくマンション事業に進出しており、2012年には世界で初めてシンガポールにコラボマンションが誕生しました。家具から壁紙、アートワークまでエルメスによるもので、世界での本格展開も期待されています。

 ほかにも、高級車とのコラボレートや家具のプロデュースなどによる邸宅のデザインなど、ラグジュアリーブランドはものづくり企業の枠を超え、人々のライフスタイルと密接に関わる体験型ラグジュアリーを提供し続けているのです。

 さて次回は、最新のブランディング事例から離れて、CSRやCSVといったラグジュアリーブランドだからこそ可能な社会貢献活動のあり方に迫っていきます。