ラグジュアリーブランドの店舗展開に変化が起こっている。商品を販売するだけでなく、カフェやレストラン、さらにはスパやバーバーなど、体験型のサービスも提供するようになっているのだ。旗艦店を「The HOME」と名付け、ブランドショップの枠を超えた展開を行っているダンヒルの例から、その背景にあるものを考察する。

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「The HOME」と名付けられた東京のダンヒル旗艦店にはバーラウンジのほかに、バーバー(床屋)がある(画像/dunhill)

 昨年、創業から120周年を迎えたイギリスのラグジュアリー・メンズブランド「アルフレッド・ダンヒル」。そのダンヒルがグローバル戦略の柱として、本拠地ロンドンに先駆けてコンセプトショップ「The HOME」をオープンしたのは、日本の銀座でした。

 2007年12月にオープンした銀座店の最大の特徴は、ダンヒル製品の販売だけでなく、バーやラウンジ、そして床屋(バーバー)といった体験型のサービスが提供されていること。商品を購入しなくても、ふらっと立ち寄って、身だしなみを整え、一杯飲んでから銀座の街に繰り出すことができるようになっているのです。

 その翌年に完成したロンドン店では、体験型のサービスはさらに充実しています。“男性の理想的な隠れ家”(=HOME)というコンセプトを追求し、かつてはウェストミンスター公爵の邸宅だった館を丸ごと改築。バーバーのほかに、ホームスパにプライベートシアターまで用意されています。

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ダンヒルのロンドン本店「ボードンハウス」。ココ・シャネルとのロマンスでも知られるウェストミンスター公爵の邸宅を丸ごと改築し、理想的な男性の隠れ家を表現した(画像/dunhill)

 このように、商品を販売するだけでなく、ブランドの世界観を包括的に体験できるスペースを提供していこうとする事例は、ダンヒルに限ったことではありません。

 例えば、ここ10年ほどでオープンしたラグジュアリーブランドの旗艦店には、カフェやレストラン、アートギャラリーなどを併設する旗艦店が増えています。シャネルの「ベージュ アラン・デュカス東京」、グッチの「グッチ・カフェ」などは先駆的な試みであり、現在も人気店として知られています。