グローバル・ビジネスでは、交渉相手との文化の違いが成果を大きく左右する場合がある。それぞれが自分の利益、優先項目、交渉戦略とともに、なかば無意識に自国の文化も交渉の場に持ち込んでくるからだ。同じ文化の相手との交渉様式に安住していると異文化交渉のメカニズムが把握できず、交渉プロセスの改善点も見えなくなる。そこで、異文化の交渉者のパターンと比較し、同じ文化のなかで馴染んでいる自明性を再確認することがカギとなる。そして、よりよい交渉の過程と成果が何であり、明日のグローバル交渉のためにどう準備すべきかを、自分の文脈に置き換えて考えることが大切である。

本稿では、(1)固有の情報処理と行動パターンを自覚する、(2)相互利益を広げる取引を実現するための情報を掘り起こす、(3)交渉の基本構造に立ち返る、という異文化交渉の3つの要諦を解説する。これらは、グローバル交渉者にとって、優れたプロセスと成果を実現するための行動原理を知る一助となるだろう。