経営資源としての「時間」を
再認識する必要性

 MITの名誉教授マイケル・クスマノとハーバード大学教授のディビッド・ヨッフィーが、ビル・ゲイツ(マイクロソフト)、アンドリュー・グローブ(インテル)、スティーブ・ジョブス(アップル)の経営アプローチの共通項を探り、そこから5つの戦略ルールを導き出した。そしてStrategy Rulesという書籍を2015年に出版した。その5つの戦略ルールの1つ目と2つ目は、(1)「未来のビジョンを描き、逆算していま何をすべきかを導き出す」、(2)「会社を危険にさらすことなく、大きな賭けをする」であった。

 この2つはどちらも「時間」を強く意識したものと言える。(1)は、未来といまをつなぐ思考と実践、(2)は、体力がある内に適切なタイミングで変革の試みを行うことである。何をするか(What)の重要性は前提条件であると認めつつも、どんな時間軸で考え、いつ、どんなスピード感でそれを行うかも、それと同じくらい重要なのである。

 見えなくて捉えどころがないが故に疎かにされてしまう「時間」。それを明示的に意識して「変化」を戦略行動の主軸に据える。そういう発想にも一理あるのではないだろうか。

 次回は、時間優位の競争戦略を語る上で欠かせない「変化」を、4つの切り口から解説する。


■つづきはこちら(全3回連載)
【第2回】企業の変化は「4つの切り口」で捉えられる
【第3回】時間に敏感な組織は、5つのステップでつくられる