戦略的ビジネスアウトソーシングの4つのモデル(1)

①包括型BPO
 デジタル変革の結果、軌道に乗り始めた新規事業に企業の主力リソースをシフトさせる際に、既存事業を維持拡大させる体制をいかに確保するのかはいずれ必ず直面する課題です。企業の全業務における、効率追求業務の占める割合は企業や部署によりばらつきはありますが、全体で言えば2~3割程度で、大多数は成果追及業務が占めます。効率追求業務のみを対象にしたオーソドックスBPOではデジタル変革特有のドラスティックなリソースシフトを支えられない状況も想定されます。こうしたニーズに対応し、成果追及業務・効率追求業務の隔てなくより広範に企業の業務を受託していくためアクセンチュアでは、成果追及業務を対象にしたサービス、インテリジェントオペレーション型BPOも提供しています。

 前述の通り、効率追求業務とは、「より少ない工数で一定品質」を追及する業務であり、従い効率追求業務を対象にしたBPOは一定品質を保ちながらの低業務コストをコミットするモデルとなっています。一方、成果追及業務は「一定リソースでより大きい成果」を追及する業務なので、成果追及業務のBPOは、たとえば、顧客ロイヤリティやキャッシュコンバージョンサイクルなどの指標を成果計測指標として設定し、アジャイルに業務変更を繰り返しながら、成果最大化を追及し、それに連動したフィーモデルを組む形となります。

 この成果追及業務のBPOはBPOサービスの新しい世界を切り開くものと考えています。効率追求業務のBPOは現状10のコストを限りなくゼロに近づけていく戦いで、最大でも生み出す価値は10に留まります。一方で成果追及業務のBPOは現状10の成果を100・1000にしていく取り組みであり、生み出す価値は文字通り桁違いのものとなります。まさに戦略コンサルティング力・ソリューション構築力・実行力を総動員できるBPOプレーヤーとしてのアクセンチュアの腕の見せ所だと考えています。

②変革リソース創出型BPO
 次に紹介するのが、BPOで既存事業の業務を一定期間預かることで変革に注力する人的余力をつくり、かつ預かっている間に既存業務を徹底して効率化して、期間終了後業務を返却する際には、預ける前よりも大幅に少ない人員数で業務実施可能にするモデルです(図4)。

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出所:アクセンチュア

 変革を集中的に行う期間のみにまとまった人的リソースを確保するソリューションとしてきわめて有効であるとともに、預けた業務について、社内ではなかなか進まなかった効率化が確実に実施される点も大きな価値となります。オーソドックスBPOは“どれだけ業務コストを落とせるか”が焦点となりますが、この変革リソース創出型BPOにおける焦点は、“どれだけ効率化された状態で返却できるか”、すなわちBPOの持つさまざまな機能のうち、“運用するなかで業務を磨き上げていく”機能に特化したソリューションといえます。

 このソリューションを導入した企業は、変革に必要な人的リソースを即座に手に入れて、その変革の成果を手に入れることが可能となります。言い換えれば、その間のアウトソーシングに関わるコストは費用ではなく、投資ととらえ、ROI(費用対効果)という視点でその効果を認識するという考え方に転換していただくことが必要となります。