戦略的ビジネスアウトソーシングの4つのモデル(2)

③新規業務確立型BPO
 デジタル変革により立ち上げた新規事業のオペレーションをBPOで確立するモデルです。前述の①包括型BPOで示した成果追及業務・効率追求業務問わない運用ケーパビリティと、②変革リソース創出型BPOで示した運用する中で業務を磨き上げてゆくケーパビリティを重ね合わせることで可能となります。通常、新規事業におけるオペレーション確立は試行錯誤の作業、すなわちプランニング段階では基本的な業務の型とKPI設定を行いあとは運用する中で漸次改善を重ねてブラッシュアップしてゆくようなアプローチとなります。

 ともすれば力わざでこの期間を乗り切るケースも散見されますが、この試行錯誤プロセスをBPOの業務改善管理・促進ノウハウを活用することで工業的に進めていく手法がこのサービスです。設定されたKPIを目的関数として一定期間BPOモデルで回し、目標レベルにまで業務確立された時点で、業務を企業に切り戻し移植します。業務確立スピードと確立後の業務の品質レベルが提供価値となります。

④成長加速型BPO
 このサービスはモデルとしては比較的シンプルで、企業が自らつくり上げた新規事業の業務、あるいは前述の③新規業務確立型BPOでつくり上げた業務を引き続き長期間にわたってBPOで回し続けるものとなります。デジタル変革においてこのBPOモデルが持つ価値は、BPOの本来的特徴である “拡縮柔軟性”にあると言えるでしょう。

 新規事業として立ち上げたデジタルビジネスが急拡大するなかで、その成長速度に同期して必要リソースを集めることのハードルは高く、労働力確保が特に困難な日本ではなおさらと言えるでしょう。運用体制の拡充が追いつかずビジネスの成長を阻害する事態は当然のことながら看過はできません。その問題に対するソリューションとしてこのモデルは大きな価値を持ちます。

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植野 蘭子(うえの・らんこ)(写真左)
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 人材・組織管理 マネジング・ディレクター
東京外国語大学外国語学部卒業後、自動車メーカーに入社し、人事部にて、海外人材採用・育成やグローバル幹部育成等、グローバル事業展開を人事・組織面から支える業務に従事。アクセンチュアに中途入社し、以降、幅広い業界において、グローバル化・デジタル化に向けた企業変革支援や人材・組織戦略、M&A支援などの戦略コンサルティングに従事。
進藤 千晶(しんどう・ちあき)(写真中)
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 コンサルタント
大学院修了後、証券会社に入社し、リサーチ部門にて資産運用の調査・コンサルティング業務に従事。アクセンチュアに中途入社し、金融業界・通信業界の顧客を中心に、IT戦略、オペレーション戦略から、営業戦略、新規事業戦略まで幅広い分野でのコンサルティング業務に従事。
山形 昌裕(やまがた・まさひろ)(写真右)
アクセンチュア 製造・流通本部 マネジング・ディレクター

東京大学工学部卒業後、総合商社を経て2003年にアクセンチュアに参画。15年以上にわたり、流通小売業界を中心にビジネス改革を推進。特にクライアント企業のビジネス構造・組織構造を変えるトランスフォーメーションプロジェクトの実績多数。