今、デジタルメガプレイヤーを中心に「スマートシティ」によるまちづくりが、改めて注目されてきている。ビジネスの在り方、および消費者の生活のデジタル化が進行する中で、スマートシティが持つ事業上の価値が変化してきたことが注目の理由であると考える。本記事では、「スマートシティ」はどのように発展してきたのか。またスマートシティ事業に、日本企業はどのように取り組むべきかについて、いくつかの事例を交えながら論じる。

スマートシティの構造変化:
まちづくりとリビングサービスの融合

1.スマートシティの変化

 スマートシティは、都市における地球環境対策を、ICTを活用して解決する取り組みとして2000年代半ばから登場し始め、今では国内外の多くの都市が様々な目的を持ってスマートシティに取り組んでいる。

 初期は、政府・自治体中心にエネルギー系×IT系企業による取り組みが主なものであり、海外では自治体と電力会社アリアンダーが主体となったアムステルダム、日本では経産省ともに推進した、横浜市、豊田市などの取り組みが挙げられる。

 その後、宅地開発と組み合わせたグリーンフィールド(新規開発)案件が登場し始め、三井不動産による柏の葉、パナソニックによる藤沢サスティナブル・スマートタウン、三菱地所による泉パークタウンなどが次々と立ち上がった。

 一方で、レトロフィット(既存街区のスマートシティ化)においては、様々な政府による取り組みが続いたのち、アクセンチュアが取り組んでいる会津若松など、首長による強いリーダーシップと、コアとなる企業の推進力を背景とした都市が成功を収めつつある。

 上記の流れの中で、スマートシティに関わる企業は、政府系事業へのソリューション導入から、不動産開発、デジタルサービス提供、イノベーション創出フィールド、とスマートシティにおける事業の価値・位置づけを変化させてきた。

2.デジタルプレイヤーの参入

 スマートシティが変化してきたこの10年間は、サイバー世界を席巻してきたメガデジタルプレイヤー、GAFAやBATが、人々の生活に浸透してきた期間と重複する。

 この動きと並行して、まちづくりにおいても、ニューヨークにおける公衆電話のWi-Fiスポット兼インテリジェントサイネージ化事業「LinkNYC」をGoogleが買収するなど、ソリューション単位でデジタルプレイヤーが参入してきた。

 そして、現在、前述のLinkNYCを出自とするAlphabet(Googleの持株会社)の子会社であるSidewalk Labsによるスマートシティプロジェクト「Sidewalk Toronto」が世界中の注目を集めている。さらには、テンセントやアリババは中国の複数の都市と「スマート都市建設提携協議」を締結するなど、BATもスマートシティに乗り出している。