アクセンチュアにおけるリスキル支援

 アクセンチュアでは、上記の要諦を踏まえ、リスキルの計画策定からスキル獲得支援・進捗評価までの包括的なリスキルプログラムを提供しています(図5)。

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出所:アクセンチュア

Ⅰ.変革ゴール設定
 まずは、企業の成長ストーリーを策定します。これは2つの意味で重要です。一つ目は、将来必要職種・必要スキルを定義し、リスキルの対象者・規模・獲得すべきスキルの内容を定めるという意味合いがあります。会社の成長ストーリーから、将来どのタイミングで、どのような職種がどの程度必要になり、各職種にはどのようなスキルが求められるかを定めていきます。これは、CEOが主導し、ビジネスの成長シナリオをもとに、数年単位での長期スパンで描く計画になります。二つ目は、社員がその企業でリスキルに挑戦しようという内的動機を産み出すことです。企業の成長ストーリーと自身のリスキルの必要性が重なり合った時に、従業員はリスキルの意欲を最大化することができます。

 それとは平行し、無意識のうちに自身および他者に対して保有しているバイアス“Unconscious Bias”の存在に気づき、それを取り除くための研修を行います。成長ストーリーがあっても、自信を失っていたり斜に構えていては、内的動機の創出には至らないため、この研修にてリスキルに向かう心理的素地を整えることが重要です。

Ⅱ.リスキル方針策定
 続いて、対象者の転換先職種と配置を決定していきます。客観的指標で個々の適性を見極め、転換先職種を検討しますが、この職種検討は、「現状スキル」と「性格傾向」の2つに立脚したものとなる点がポイントです。これらを評価するための指標を整備し、インタビューアセスメントや、HR Techによるアセスメントを活用し、適性を評価します。一例を挙げると、弊社が過去にデジタル組織づくりを支援した事例では、テクノロジーだけでなく経理・人事などのバックオフィス・マネジメント職種も含む30の職種に対して必要なスキル内容と、そのスキルレベルを評価するための指標を定義しました。

 また、個々のリスキル方針を定める一方で、リスキルに向けた内的動機創出と覚醒のプロセスに進みます。アクセンチュアでは、“Lead the Self”という、3~4時間ほどのワークショップにて、自分自身の強みや性格傾向、やりたいことなど、自分自身と向き合うことを通じ、会社の方向性と自分自身の変革方向性を同期させるアプローチを採っています。やらされ感を脱し、自身の内面から湧き出る動機を土台に、リスキルに臨みます。

Ⅲ.スキル獲得支援
 配置が決定した後は、リスキル実行に向け、全社横断的な再配置と育成施策の実行を加速していきます。ここでは、逆説的ではありますが、「続ける」ことと「続けることにこだわらず変えていく」ことの両方が重要になります。

 「続ける」ことは、現状の可視化・モニタリングです。スキル獲得にはある程度の時間がかかることを念頭に、スキル向上の進捗を継続的にモニタリングし、評価する仕組みを持っておくことは必須です。また最初のプロセスにて燃え上がらせた社員の意欲を維持向上することも欠かせない取り組みであり、こちらも継続的な可視化と分析が必要となります。

 一方、個々の配置や育成施策は、最初のプランに固執しすぎず、継続的なモニタリングの結果を踏まえて必要に応じて柔軟・迅速に変えていくべきです。この評価と再配置・育成施策の改善サイクルを、テクノロジーも使いながら高速化することが、実行段階ではきわめて重要となります。