ゼロベースの営業キャパシティ
時代遅れの手法で顧客や担当地区の割り当てをしている営業組織があまりにも多い。彼らは過去の営業データや大雑把なレポートに頼って、全体の市場規模を算出したり、必要な営業担当者の人数と配置を見積もったりしている。デジタルツールを活用することで、より正確なマッチングが可能だ。
たとえばデータセンターや通信ネットワーク企業向けにデジタルインフラを提供するバーティブは、いくつかの特徴的なデータ(例えば、ある施設に設置可能なサーバーラックの数)を活用したビジネス機会算出プログラムを確立した。このプログラムは、顧客上位100社のそれぞれについてバーティブの主要3製品に支出可能な金額の合計を算出したり、各地区の小口顧客の市場規模を推定したりすることができる。
同社がこの新たなプロセスを用いて主要5顧客の潜在的市場を再評価したところ、従来の推計値を50%上回る(18億ドル対12億ドル)ことが分かった。そして同社は、この最新の推計値に基づいて新たに見積もったビジネス機会を捉えるために、営業の顧客カバー体制を修正したのである。
手を引くタイミングを知る
多くの営業組織は、どの顧客に一番時間をかけていて、実際に顧客との対面時間をどのように使っているかについて追跡していない。さらに悪いことに、ほとんどのチームは顧客、製品ライン、取引ごとの収益性を定量的に把握していない。
この問題に対処するために、あるクラウドサービス・プロバイダーは、個々の取引レベルの収益性を定量化するためのデータ分析を実行した。そして、データをどこから見ても2000ドル未満の契約では利益が出ないという結論を得た。この分析結果は経営幹部が小規模契約を禁止する根拠となり、営業組織がより大規模な契約の締結に集中するようになって、同社は数四半期も達成できなかった営業目標を翌四半期に達成した。
低コストの営業チャネルを拡大する
状況によっては、小口の収入源を諦める代わりに、利益が上がる形で小規模な契約を締結できるチャネルを編み出す企業もある。何かを売り込む際に、外回りの営業担当者が必ず顧客と接する必要があるというのは神話である。場合によっては内勤営業グループの方が、コスト効率の良い営業活動を実行できる。
自動車ディーラーを顧客とする、あるオンライン広告・ソフトウェア会社の例を考えてみよう。幾度かの企業買収を経て、同社の営業部隊の成績は低迷していた。特に小規模ディーラーに対する営業とサービス提供のコストがかさみ、これらの顧客の利益率が縮小あるいは赤字化していた。また、営業担当者の時間も過度に奪われていた。同社は小規模ディーラーの担当を内勤の営業センターに切り替えた。このことによりコストが減少しただけでなく、従来サービスが手薄になりがちだった顧客層への気配りが強化されて、ディーラー側の顧客体験も改善した。一方、営業担当者は束縛がなくなり、より大規模なプロジェクトの営業活動に時間をつぎ込めるようになった。その結果、この会社では新規顧客獲得数が前年比3倍に増え、顧客減少数は大幅に減った。
内勤営業への切り替えには、通常は高度なデジタルマーケティングのケイパビリティが必要である。新たなデータソースや予測分析ソフトウェアは、内勤営業組織がターゲット顧客を特定したり、マーケティングや営業のリソースをリアルタイムで配置したりすることを支援する。例えばあるITサービス会社は、ディスカバーオーグと呼ばれるツールを使って、顧客が購入する可能性を示唆する人事・組織関連のデータ(ネットワーク担当管理職の求人など)マイニングを行っている。そうしたデジタルツールの導入後、同社の営業チームが見込み客と初回打ち合わせを設定できる確率は倍増した。