効果的な行動を見極め強化する

 成績トップの営業担当者とそれ以外を分ける要因を理解したい企業は、オンラインカレンダーや電子メールのやり取りをマイニングする分析エンジンの活用を進めて、優秀な成績と相関関係のある行動の特定につなげようとしている。このような効果的な行動を研修に組み込んだり、現場のマネジャーが推進したりすることも可能である。

 あるB2Bのテクノロジー企業は、マイクロソフトのワークプレイス・アナリティクスなどのデジタルツールを、営業担当者の行動の追跡に活用した。そのデータによると、成績トップの担当者はその他と比べて、社内の複数グループとやり取りをする割合が3倍、同僚の営業担当者と協力する割合が2倍、直属のマネジャーと毎週見込み顧客のレビューを行う割合が1.5倍も高いことが分かった。こうした行動を教育し、マネジャーによって継続的に推進することによって、成績下位の担当者の生産性を押し上げることができる。

 顧客管理を自動化する

 優秀な営業担当者は、各顧客について、ビジネス機会、顧客内シェア、意思決定者とインフルエンサー、重要なアクションの最新状況を常に把握している。レベジーやオルティファイといったソフトウェアアプリケーションは、こうしたプロセスを自動化し、企業の顧客管理プラットフォームに組み込むことによって、戦術的なビジネス機会追跡ツールを強力な戦略計画ツールに変える。

 こうした分析は顧客の維持やクロスセルもサポートする。ある産業機器販売会社は、顧客にクロスセルをするべき製品を特定するために、ラティスエンジンズの人工知能を使っている。同社がこれを試験的に活用したところ、人工知能の提案を利用した営業担当者は、利用しなかった者と比べて売上が3~4%高かった。そして本稼働後は営業担当者全体で売上高の増加が見られた。

 バックオフィスを合理化し、デジタル化する

 営業支援組織は、景気後退時に真っ先にコスト削減のターゲットになる傾向がある。業務の大部分のデジタル化と自動化を進め、スタッフが報告書を取り出して手作業で数字を照合する必要性を省くことにより、コスト圧力の先手を打つことは無駄ではない。最も優れた営業支援組織では、スタッフは価値のある知見を生み出す分析作業(クロスセルの機会を見つけるための既存顧客のマイニングなど)に従事している。

 その他にデジタル化の機会がある業務として、CPQ(製品構成・価格設定・見積)プロセスが挙げられる。例えばある電気通信会社は、iPadのアプリケーションを使って幹部の契約レビューを支援している。小規模な契約についてはこのアプリがリスク水準、商業的実現性、戦略的機会、さらに利益率や落札できる確率等、必要な情報をまとめて容易に確認できるようにしてくれる。

 価格設定の精度を磨く

 B2B企業はほぼ例外なく、価格設定の改善余地がある。ベイン・アンド・カンパニーが1700社以上の営業・マーケティング担当の役職者を対象に実施した調査によると、85%の企業が、自社の価格設定の判断に改善の余地があると考えていた。しかし、そのための適切なツールやダッシュボードが自社にあると答えた企業はわずか15%に留まった。価格設定能力がすでに優れている企業も、以下のようなデジタルアプローチによって、さらに価値を引き出す機会を見出している。

・動的契約スコアリング:過去の取引、現在の顧客セグメントや嗜好データ、勝率、競合価格データについてマイニングを行うことにより、各契約に適した形で統計に基づいた価格設定指針を出す。
・アルゴリズムを用いた価格設定:外部市場、顧客、現在の需給に関するマクロデータ、競合他社の価格設定や変遷の情報を用いて、最適な価格を瞬時に決定する。
・反復機械学習:人工知能がサポートするA/Bテストを短いサイクルで繰り返すことにより、利益および数量目標を達成するための最適な価格をSKUレベルで決定する。