ZBBの導入方法論とエッセンス(1)
ZBBは6つのステップから構成される。最初の2ステップ(可視化、削減施策検討)を除く一連のステップは繰り返し行いながら定着させる仕組みであり、それをクローズドループと呼んでいる。今回は各ステップにおけるエッセンスの一部を紹介する。

出所:アクセンチュア
1.ビジビリティ(可視化)
全間接コストを対象に、「だれが」「何に」「どれだけ」使っているかをあらゆる社内データを組み合わせて網羅的に把握する。結果としてアクセンチュアの定義する約150のサブカテゴリにコストが分類される。このプロセスを行うと、管理会計上分類された項目と実際費用の中身の実態が大きく異なることが明らかになる。一般的にERPの会計用コードは対外的な数値を公表の観点で設計されているので、コスト管理の粒度には適していない。アクセンチュアの経験では当初から正しく分類されている費用は60~70%程度であることが通常である。つまりこのプロセスを通じて初めて自社の費やすコストの実像が可視化されるのである。
2.バリューターゲティング
何の費目をどの程度まで落としたいか(落としたくないか)、経営の意思を入れながら削減施策をつくり込むステップである。各コストの削減ドライバーを分析し、施策の実行難易度・効果のトレードオフを鑑みて取り組み内容を判断していく。この段階から現場の巻き込みはスタートしており、社員のアイデア貢献と正しいコスト意識を植えつける教育プロセスを兼ねている。実際にワークショップを行うと、これまで部門の壁で言い出せなかった・人間関係のなかでお蔵入りになったアイデアを是々非々で議論できて、大変有意義だったという声が出る。
3.パッケージオーナーシップ
コストパッケージ単位(取組対象の費用カテゴリを括った単位)で役員クラスの責任者をパッケージスポンサーとして設定する。また所属組織横断で担当パッケージのコストを横断的に管理する責任者:パッケージオーナーを配置する。パッケージオーナーは目標達成のためのコスト意識変革を支援する“伝道師”となる。分析結果や削減アイデアを基に施策を決めて経営会議に上申し、各部門に対しそのやり方や考え方を伝えていく役割を担うのである。これは伝道師の名の通り、仕組みが社内に浸透した段階で役割を終えるので必ずしも恒久的に必要ではないが、改革が走る2年程度の期間は必須である。パッケージオーナーは名実ともに幹部候補であり、このプログラムを通じて役員と密な連携ができるので個人のモチベーションも上がる。経営側としても幹部候補が正しいコスト意識を持って成長することが会社の持続的利益体質強化につながる。

出所:アクセンチュア