コスト削減の取り組み成功に必要な心構え
ここまで、アクセンチュアのZBBアプローチの特徴や方法論の概要を紹介してきたが、よく聞かれる疑問と成功している取り組みに共通するポイントについて論じたい。
1.コストドライバーを大胆に設計すること
“対前年比”でコストを判断する方法はシンプルで合意に至りやすいことに疑いようはない。しかしこれこそが本来必要のない費用に注意が払われず、長年放置されている根本理由になっていることが多い。まずはこの意識を取り払うことが第一歩である。
2.所属組織や事業干渉範囲を超えた“パッケージオーナー”を定義し権限を与えること
抜本的な取り組みの必要性は理解しつつも、組織や事業の干渉範囲を超えて専門外のコストをコントロールすることに抵抗感があるという声を聞く。しかし、パッケージオーナーはあくまで企業価値最大化ミッションのために、会社を代表して必要な施策を理解し、社内全体への導入を支援する伝道師である。この役割を経営陣が後押しする姿勢と覚悟が必要である。
3.事業予算策定時に実行施策と連動した必要経費をゼロベース考えること
予算策定は多くの企業で元来負荷が高く、はっきりとした正解のないプロセスである。しかし、正しい施策で最大効果を得るためにはこのプロセスに変化が必要である。予算議論を健全な緊張感のなかで明確な説明責任を持てる状態にすることは、企業の継続的コスト抑制に貢献し、体質を変えるほどのインパクトを持つ。
ZBBは、コンサルタントの立場から見てもクライアント企業とOne Teamで取組み、目に見える形で企業価値向上に貢献できる、コンサルタント冥利に尽きるプログラムである。これからもさまざまな日本企業への導入を通じて、その競争力向上の一助となるよう、すでに確立されたこのプログラムをさらに次世代型に磨いていきたい。

アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 サプライチェーン&オペレーションズグループ日本統括 マネジング・ディレクター
慶應義塾大学卒業後、2000年アクセンチュア入社。テクノロジー部門を経て2011年より戦略部門に異動。製造業・ハイテクなど複数産業、また国内外でのサプライチェーン企画・設計を多数歴任。サプライチェーン以外にも生産、調達、R&DなどCOOのアジェンダを広くカバーする経験を有し、ビジネスモデル変革からそれに応じた機能設計までを一貫整合して実施するスタイルで定評を得ている。
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 シニア・マネジャー
慶應義塾大学理工学部卒業後、2005年アクセンチュア入社。その後、米系戦略コンサルティングファームを経て2016年に再入社。製造業・ハイテク産業を中心とした幅広い業界を対象に、全社規模の構造改革、BPR、コスト削減、注力事業の営業・マーケティング戦略、R&D戦略、サプライチェーン改革など、短中期的財務効果に直結するテーマの実績・専門性を有する。